カフェ開業への道のりを模索

その日のことが引き金になったかどうかはさておき、美月はまもなく退職した。次の職場が決まっているわけでも、なにかあてがあったわけでもない。ただ、あれ以上、田浦の下で働き続けるのは無理だった。

数日後さえ見えない心もとなさを慰めるように、美月は机の引き出しに入れていたノートを取り出した。ノートはカフェの開業に向けて調べたことやアイデアを書き留めてきたものだ。

カフェで働きながら、コーヒーフェスやマルシェに顔を出しては、出店している焙煎士の人たちやコーヒー豆の業者の人たちと交流をしてきた。それは独立に向けた人脈づくりのためであり、情報収集や勉強のためでもあった。

そのすべてがノートには書き込んである。けれど美月が独立するには、まだ大きなものが足りなかった。

店舗を構えるには、物件取得費や内装工事費、ほかにも食器やカップ、テーブルやイスなどの店内設備、空調設備など、とにかくお金がかかった。概算の開業資金は最低500万。インテリアにこだわれば、この金額はもっと高くなるだろう。

もちろん、美月が生きていくための生活費だって稼がなければいけない。

「……やるしかないよね」

ノートを開いたまま、美月は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。