一矢報いる美月

「あの……店長が前におっしゃっていた通りに発注しているんですけど」

「え、じゃあ何? 俺のせいなの?」

「いや、別にそういうわけじゃ……」

「俺がそう言ったかもしれないけど担当は山城さんでしょ。俺だってアドバイスはするけどさ、自分でちゃんと考えて判断するべきだと思うよ。この店に来てどれくらい? もういい加減、これくらいはできるようになってくれないと困るな」

そうは言うものの、自己判断でやったらやったでまた「店長は俺なんだけど」とでも文句を言ってくるだろう。美月は喉までのぼってきた反論を飲み込んで謝った。

けれど、謝ったのは悪手だった。田浦は虫の居所が悪いのか、美月が下手に出たのをいいことに、あからさまなため息をついた。

「山城さんがうちで働いてるのって、自分の店が持ちたいからなんでしょう?」

夢の話は田浦にしたことがなかったので、美月は動揺した。誰から聞いたのだろうか。それとも店の誰かと話しているのを盗み聞きされたのだろうか。田浦は美月を小ばかにするように、口元に薄い笑みを浮かべた。

「まぁ、頑張ってはほしいんだけど、発注すらまともにできない今のままなら難しいと思うよ? 頑張ってはほしいんだけどね」

2回くり返すところが猛烈に嫌味ったらしいけれど、それ以上に夢や目標を否定されたのがひどく堪えた。

「……と思います」

「ん? なんて?」

「一緒に働く人に嫌味ばかり言って、パワハラとモラハラのオンパレードの誰かさんよりは向いていると思います!」

気が付いたときには大声を出し、両手で机を叩いていた。3年間、積もり積もったものが弾けたのだ。

田浦は目を丸くして、美月を見上げていた。やってしまった、と思いながらも、美月は決して謝ろうとは思わなかった。