行動経済学の罠その2:リーセンシー・バイアス(直近性)

 次に向き合うべきは「リーセンシー・バイアス」です。

これは、最近起きたことが今後もずっと続くのではないか、と錯覚してしまう心理です。

例えば、原油や金の価格が1ヶ月上がり続けると、今年一杯ずっと上がり続けるのではないかと考えてしまいがちです。

 このバイアスは私たちの記憶を支配します。

コロナ禍の初期には「リモートワークが永久に定着し、人は永遠に距離を取って話し続ける」といった予測が真面目に語られていましたが、時間の経過とともに多くのことが平常の状態に戻りました。

人間には「3ヶ月同じことが続けば永遠に感じられる」という性質があると言われていますが、投資においては常に「歴史を見れば、平常に戻ることも十分に考えられる」という冷静な視点が必要です。

行動経済学の罠その3:群衆心理の罠(同調性)

 株式市場において、最も強力で恐ろしいのが「群衆心理」です。

災害や混乱が起きた時、人は深い思考を停止させ、みんなが走る方向に一緒についていこうとしてしまいます。

 投資においても、周囲がパニックになって売っているのを見ると「自分も売らなければならない」という強烈な衝動に駆られます。

「暴落時にこそ買う」と口では言っていても、いざ大暴落を目の当たりにすると、SNSに溢れる悲観的な物語に呑まれ、多くの人が耐えられずに安値で株を手放してしまいます。

 この群衆心理を克服し、大衆とは逆の視点で冷静な判断を下せるかどうかが、投資の成否を分けます。

行動経済学の罠その4:損失回避バイアス

 人間にとって「損をすること」は、想像を絶する苦痛を伴います。

行動経済学の研究によれば、損失を出した時の痛みは、同じ金額の利益を得た時の喜びの約2倍に相当すると言われています。

この強烈な痛みを避けようとする心理が「損失回避バイアス」です。

 相場が不安定になり、損をしたくないという思いが強まると、多くの人が株を売って逃げ出そうとします。

SNSなどで「自分は上手く売り抜けた」と語る人の裏側には、実はこの損失回避の心理が強く働いていることが少なくありません。

しかし、投資で最も大きな収益を得られるのは、不安定な時にこそ恐怖に立ち向かって株を持ち続けられた人です。

 上手い投資家は、周囲が幸福に包まれている時にこそ危機感を持ち、逆にみんなが恐怖を感じている時にこそ勇気を持って動くことができるのです。