<前編のあらすじ>
夫・侑大からWebデザインの独立を告げられた三花は、以前から限界を感じていたアパレルの仕事を辞め、侑大の事務を手伝い始める。
慣れないPC作業に戸惑いながらも、夫婦で協力して仕事を回す日々は新鮮で、三花の表情にも少しずつ明るさが戻っていった。
しかし案件が増えるにつれ、侑大の指摘は次第に厳しくなり、三花は家の中で常に仕事の評価をされているような息苦しさを覚える。思い切って「短時間でも外で働きたい」と伝えるが、侑大には一蹴されてしまった。
●前編【「謝るより覚えて」夫婦二人三脚フリーランス生活のはずが…妻を追い詰めた無限ダメ出し生活】
見抜かれた三花の異変
大学時代の友人で、侑大とも交友のある佳織にランチへ誘われたのは、パートの話をしてから数日後のことだった。駅前のカフェはほどよくにぎわっていて、食器の触れ合う音や、誰かの話し声が途切れなく流れている。
「けっこう久しぶりだよね。元気だった?」
向かいに座った佳織が、メニューを開きながら笑う。
「うん、まあ元気」
「その感じ、全然元気じゃないでしょ」
冗談めかした口調だったが、佳織の視線は三花の顔をまっすぐ捉えていた。運ばれてきたランチセットの前で、しばらく世間話をしてから、佳織は再び話題を振った。
「で、どうなの? アパレル辞めて、侑大の仕事手伝ってるんでしょ?」
「うん。やっと解放されて楽しいよ」
「嘘だ。なんか三花、ある意味前より疲れてる」
その一言に、思わずどきりとさせられた。自分では平気な顔をしていたつもりでも、旧友から見ればそうでもなかったらしい。
「そんなことないよ」
「あるよ。今だって、顔色悪いもん。ちゃんと休めてる?」
三花はすぐに答えられなかった。
家で働いているのだから通勤もないし、前の店にいたころよりましなはずだと、自分でも何度も言い聞かせてきた。しかし、言葉に詰まった時点で、もう答えは出ているような気もする。
「侑大さ、言ってることは、間違ってないの」
「うん」
「まだ私がPC作業慣れてないのもあるし、シンプルにミスしちゃうときもある。だから、言い返せなくて」
佳織は黙って聞いている。ひと呼吸おいて、三花は続けた。
「会話も、ずっと仕事ばっかりで、家にいても、休んでる感じがしないの。何か一つ間違えるたびに、努力が足りないって言われてるみたいで」
「それ、かなりしんどいじゃん」
「……うん。そうかも」
