初枝に突きつけた親の覚悟

その瞬間、リビングがしんと静まり返った。百合子は驚きと同時に、目頭が熱くなるのを感じた。しかし、初枝は表情を固くして言い返す。

「ばあばは、いじめてなんかいません。ゆうくん、そういうこと言うものじゃないの」

「でも」

「でも、じゃない! ばあばは正しいことを言ってるの!」

突然の金切り声に、優斗はびくっとして、百合子の後ろへ隠れる。おびえる息子を見た瞬間、百合子の中で何かが切れた。

「お義母さん、もういい加減にしてください」

「何よ。私はこの子のためを思って、しつけてあげただけでしょう」

「3歳の子にむきになって、声を荒らげて、何がしつけですか」

きっとにらみつけると、初枝は一瞬言葉を詰まらせ、それからすぐに顔色を変えた。

「百合子さん、ずいぶん偉くなったのね」

「私は親として、当たり前のことを言ってるだけです」

「そんな安物の服で式に出るような人が親を語らないで」

「そこまでだ、母さん」

康介の声が、低く響いた。

「勝手に入園式に出ようとしたり、百合子の服装に文句言ったり、全部余計なんだよ。百合子の言う通り、優斗の親は俺たちだ。母さんじゃない」

初枝が、信じられないものを見るような目で康介を見る。

「あなたまで、そんな言い方するの」

「今までちゃんと言わなかった俺が悪かった。でも、もう勝手に家に来て口出しするのはやめてくれ。迷惑なんだ」

「私はゆうくんのことを思って……」

「だったら、なおさら距離感は守って」

百合子は優斗の頭を撫でながら続けた。

「この子に必要なのは、親の私たちが落ち着いて過ごせることです。そのためにも、今後はわきまえていただきたいです」

初枝の口元が引きつり、痙攣を起こしたように震えている。彼女は何か言い返そうとしていたが、結局バッグを乱暴につかむと、「もういいわ」とだけ吐き捨てて立ち上がった。玄関ドアが乱暴に閉まる音がして、家の中が急に静かになる。

「ママ……」

「もう大丈夫だよ。ママを守ってくれてありがとう」

「うん!」