居座る義母と再燃する衝突

家のポストを開けた瞬間、百合子は息を詰めた。鍵が入っていない。康介も異変に気づいたらしく、優斗の手を引いたまま眉をひそめる。

「……まだいるのか?」

恐る恐る家の中に入ると、初枝は我が物顔でリビングのソファに腰かけていた。ローテーブルの上には開封済みの菓子の袋が散らばっている。

「おかえり。遅かったわね」

「お義母さん、帰ってなかったんですか」

「何よ、その言い方。ゆうくんが帰ってくるのを待ってたのよ」

初枝はそう言って、また百合子を上から下まで眺めた。

「それで、どうだったの」

百合子はバッグを置いて、初枝を振り返った。

「式は無事に終わりました」

「そう。写真はちゃんと撮れたの? ビデオは? 最初から私が一緒に行けば、楽だったのに。周りのお母さんたちは、もっときちんと段取りしてたんじゃないの?」

康介が優斗の上着を脱がせながらあきれたように言う。

「母さん、もういいだろ。式は無事に終わったんだから」

「よくないわよ。親がみっともない格好をしていたら、子どもが恥かくんだから。私、この子がかわいそうな思いするのは嫌なのよ」

強制的に置いていかれたことがよほど腹に据えかねていたのだろう。朝よりも、ずっと嫌味な言い方だった。ようやく入園式を終えて一息つけると思ったのに、帰ってきてもまだ続くのか。百合子がうんざりしていると、不意に優斗が言った。

「ばあば」

見下ろすと、優斗が百合子の脚にしがみついたまま、まっすぐ初枝を見ていた。

「なあに、ゆうくん」

「ママ、きれいだったよ。いちばん、ママがきれいだった」

懸命に言葉を紡ぐ優斗を前に、初枝は鼻で笑うように言う。

「ゆうくんは子どもだから分からないだろうけど、ママはとっても残念な格好をしてるのよ。ママのせいで悪く言われるの、ゆうくんも嫌でしょう?」

すると優斗は百合子の脚からぱっと手を離し、初枝の前で両手を広げた。

「ばあば! ママいじめちゃダメ!」