妹からの「SOS」が届いた…
「お願いします! 助けてください」
ある日曜の午後、時間外の臨時業務を終え事務所から帰宅しようとした瞬間、後ろから声をかけられた。
驚いて振り向くと、そこには疲れた表情の美矢がいた。私は再度事務所のドアを開けて、彼女を招き入れる。
美矢の話によると、利弥から遺産分割のやり直しを迫られ、精神的にも限界が近づいており、遺産分割に立ち会い遺産分割協議書を作った私の存在を思い出し、助けを求めに来たのだという。
私はどうしたものかと迷ったのだが、遺産分割協議書は有効だという説明のみを行い、り、兄妹間の争いの仲裁はしないことなどを前提に、彼女の要請に応えることにした。
申込書に記載してもらい、正式に受託。翌週の日曜日の午後、私の事務所にて利弥、美矢、私の3人で話し合いを行った。
遺産分割はやり直し不可
ご存じの方もいるかもしれないが、一度成立した遺産分割は原則としてやり直すことができない。相続した財産が天災で焼失しようが、本人が使い切ろうが、社会情勢によって価値が大きく変動しようが同じだ。「都合が悪くなったからやっぱナシ」は法律上通用しない。
私は事務所の椅子に座り、同じく目の前に座っている利弥と美矢に説明した。
「だから言った、言わないの水かけ論を防ぐために、私の立会いのもと、遺産分割協議書を作ったんじゃないですか」と言った上で、遺産分割協議書の内容について確認しながら話をした。
だがそれでも利弥は納得しなかった。「こんなの不公平だ、おかしい」と、一方的に感情論を展開し聞く耳を持たなかった。
最終的に美矢に対して「旦那の仕事先や子どもの学校にビラをばら撒くぞ」と脅し始めたり、私に対しても「お前もこの事務所で開業できなくしてやるぞ」などと騒ぎ始める。
利弥のふるまいは限度を越えていると判断した私は、目配りをして美矢の意志も確かめた上で、「当事務所への脅迫ですか? これ以上は警察に介入してもらうことになりますがよろしいですか?」と冷たく突き放すように言った。
その瞬間、利弥は椅子を蹴って立ち上がり、脱兎の勢いで文句を言いながら帰っていった。
私はその場に残っていた美矢と今後のことについて少しだけ話をした。利弥の振る舞いがあまりにもひどいようなら、事務所の提携先の弁護士に相談するように伝え、その日は解散となった。
