はじめに
イラン情勢の緊迫化により、原油価格高騰が懸念されている。実際、週明けのWTIは1バレル=70ドル台を上回る水準で推移しており、今後の経済活動に影響が及ぶことが警戒される(図表1)。
原油価格が上昇すれば、企業の投入コストが上昇し、その一部が産出価格に転嫁されるため、変動費の増分が売上高の増分に対して大きいほど利益に対する悪影響が大きくなる。また、価格上昇が最終製品やサービスまで転嫁されれば、家計にとっても消費者物価の上昇を通じて実質購買力の低下をもたらす。そうなると、企業収益の売り上げ面へも悪影響が及び、個人消費や設備投資を通じて経済成長率にも悪影響を及ぼす可能性がある。
特に、原油高が企業活動に及ぼす影響として、ガソリン価格の上昇がある。ガソリンの全国平均価格は暫定税率廃止でこれまで落ち着いてきたが、原油価格の上昇で反応するのがガソリンや軽油、灯油の価格である。また、原油先物価格が上がれば、化石燃料から作られる電気やガス料金も輸入原油価格から3~5カ月のタイムラグを伴って値上がりする。
さらに、原油価格の上昇は船の燃料となる重油やビニールハウスの温度調節に使われる業務用ガソリンなどに影響するため、第1次産業にとっては負担増となり、場合によっては収穫された魚や野菜、果物などの値上がりにも結び付く可能性がある。
他方、世界的にガソリン価格が上がれば、その代替エネルギーとなるバイオ燃料の需要が増える。このため、バイオ燃料の原料となる穀物の値段も上がる。例えば小麦の価格が上がれば麺やパン、菓子類に影響がでるほか、大豆であれば大豆製品や調味料、トウモロコシなら家畜のえさを通じて肉や乳製品の値上がりも誘発されるだろう。
このように、原油先物価格の上昇は幅広く企業活動の負担増に結び付くことになる。そして、これから春に突入して気温が高くなる北半球では行楽シーズンでガソリン需要が増えるため、急激な原油価格の下落は想定しにくい。このため、今後の展開次第では、家計や企業は原油高に伴う負担増を強いられる可能性がある。