治療計画書を手に帰宅
来たる診察日の夕方、帰宅した大輔の手には小さな封筒があった。
三奈がそれを見て眉を上げる。
「お、ちゃんと行ったんだ」
「うん、行ったよ。今日は治療っていうよりも計画立てる感じだったけど」
「ふーん、その封筒は?」
「治療計画書ってやつ」
封筒から紙を出す。印刷された歯の図に、丸がいくつも付いている。
「丸が虫歯ってこと? なんか多くない?」
「……8か所。1回で終わらないって」
言った瞬間、喉が乾いた。三奈は図を覗き込み、声を少し落とす。
「痛かった?」
「いや、次から本番だって」
「本番って何」
「削るとか……そういう」
三奈は眉を上げ、すぐに息を吐いた。
「気のせいだ、忙しいから無理って、先延ばしにしてた人は誰?」
「俺です」
「治療の道のりは長いね」
「うん。長い」
来週、次の週、その次の週も続く治療の予定……。大輔は予約カードをテーブルに置き、頭を抱えた。
●虫歯を放置し続けた大輔は、三奈に促されようやく歯科医院へ。診察の結果、虫歯は8か所も見つかり、治療は何週間も続くと告げられた。「忙しい」を言い訳に先送りしてきた代償は、想像以上に大きく…… 後編【虫歯8本、前歯の治療だけで15万円…高額治療費を代償に怠惰なアラサー男に芽生えた意識改革】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
