痛みに耐えきれず決意する

夕食は三奈が作った鶏の照り焼きだった。皿を前にしただけで、無意識に身構えてしまう。昨日から、右の奥がはっきりと痛い。食べ物を左へ寄せ、ゆっくりと咀嚼した。それでも1口目で、口の中から脳が直接刺激されるような鋭い痛みを感じた。

「あ、今痛いでしょ?」

即座に三奈が反応して、箸を置いた。

「いや、別に」

「嘘。食べ方変だよ。白状して。痛いのはどっち側?」

「……右」

「歯医者行きなさい」

大輔は手を伸ばし、苦し紛れにコップを握った。常温の麦茶を少しずつ口に入れるが、それでも痛みは残る。

「忙しくて、なかなか行く時間がないんだよ」

「それは分かってる。でも、まともに食べられないのはまずくない? 噛むと痛いんでしょ?」

「うん……刺激が加わると痛い……」

「かわいそうに。このままだと流動食コースだね。なんなら今、作ってあげようか? ミキサーでガガガっと」

三奈はにやりと笑って食事を再開した。

白米、鶏の照り焼き、ポテトサラダ、大根の味噌汁。料理が彼女の口に吸い込まれていくのを眺めながら、大輔は食卓を見下ろした。

「……明日、電話する」

「電話する、じゃなくて。予約まで済ませるの。いい?」

「分かったよ」

その夜、大輔は布団に入っても眠れなかった。

痛みは、寄せては返す波のように、何度もやって来る。枕元のスマホで時間を見ると、もう2時を過ぎていた。