デメリット1:円安による輸入物価の押し上げ
以上から、今の円安がかなり行き過ぎているという評価に異論はないと思われますが、これが日本経済にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
円安には、例えば輸出企業の収益を一時的に押し上げたり、株価が上がったり、インバウンド需要が増えたり、といったメリットがある一方で、輸入物価を押し上げて国内インフレを高めたり、日本企業や日本人の海外における購買力を低下させたり、といったデメリットもあります。
このうち円安が行き過ぎているとの評価に鑑み、デメリットの方に焦点を当てると、まず輸入物価への影響は図表4からはっきり確認することができます。図には、契約通貨ベースと円ベースの輸入物価の前年比を掲載しています。
契約通貨ベースというのは、日銀が調査している輸入品の価格を、輸入企業が輸入元と契約している通貨のまま集計した輸入物価で、契約通貨の構成(2024年末)は、米ドルが64.0%、円が30.6%、ユーロが2.5%、その他2.9%となっています。
円ベースは、その契約上の外貨建て輸入価格を日銀が円ベースに換算した上で集計した輸入物価で、この円ベースと契約通貨ベースの差に、円安の影響が表れることになります。こうした視点で両者を比較すると、2022年以降の円安によって、円ベースの輸入物価が契約通貨ベースの輸入物価より30%以上割高となっています。
<図表4 輸入物価に与える円安の影響>
こうした輸入物価への影響は、当然、日本企業のコストを高めることを通じて国内物価の押し上げにもつながっています。
デメリット2:円安による賃金の相対的な低下
また、円安が過度に進むと、日本企業や日本人の海外における購買力が低下します。逆に、海外投資家などから見ると、日本における購買力が高まるため、日本の企業や不動産などが買いやすくなります。それは、当然ですが、日本の労働力についても同じことが言えます。
図表5は、厚生労働省の毎月勤労統計から、30人以上の事業所の賃金(現金給与総額)の推移を見たものです。
<図表5 日本の賃金(現金給与総額)>
これを見ると、ここ数年、ようやく賃金が上昇に転じていることが確認できますが、それでも2025年は40.8万円と、ピークを付けた1997年の42.1万円から依然として3.3%低い水準にとどまっています。しかし、これをドル換算してみると、もっとがっかりするような姿になります(図表6)。
<図表6 日本の賃金(現金給与総額)のドル換算値>
図表6は、図表5で示した賃金(現金給与総額)を、単純にドル円相場でドルベースに換算したものと、比較のため図表3で紹介したPPIベースの購買力平価で換算したものを掲載しています。
これを見ると、ドルに換算したわが国の賃金は、近年の円安によってかなり目減りしていることが確認できます。2025年の2,614.7ドルは2020年の水準から25.6%低く、購買力平価で換算した4,380.7ドルからは40.3%も下方に乖離(かいり)していることになります。
このように、過度な円安は日本からの人材流出リスクをはらんでいるほか、海外からの人材流入の妨げにもなると見ることが可能で、やや長い目で見れば、労働需給の側面からインフレを押し上げたり、日本の生産性が低下するリスクも含んでいます。
