2025年、米国株(S&P500)は年初から約16%のプラスリターンとなった。特にトランプ関税の影響で急落した4月7日の底値からは29%も切り返した。日本株(日経平均株価)もまた、終値ベースで昨年の最高値をつけた10月31日時点で、年初からは33.3%の上昇率となった。

昨年は春先のトランプショックから一転してリバウンドとなったが、今年の世界経済、マーケットはどうなるのか。BNPパリバ・アセットマネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ダニエル・モリス氏に話を聞いた。

 

2026年は慎重ながらも楽観シナリオ

――はじめにグローバルのマクロ経済見通しについて教えて下さい。

足元のマクロ経済環境は堅調です。4月にいわゆる「トランプ関税」の導入が発表され、一時的にマーケットは混乱しましたが、結局のところ貿易戦争には至りませんでした。2026年については、いくつかの点で慎重に見なければならない点はありますが、基本的にわれわれは楽観視しています。よって株式市場については、米国のNASDAQも新興国も、そして日本もオーバーウェイトで臨む方針です。

――最も影響力が大きく、人々の関心が高い米国経済の動向について教えてください。

米国については、GDP成長率への寄与度としては事業投資がしっかりしており、とりわけAI関連において、それが顕著に見られました。これは、当面続いていくと見ています。一方、製造業においては足元の設備投資が前年比マイナスで推移していましたが、2026年はプラスに転じるでしょう。というのも、関税引き上げの目的が、米国における事業投資を活性化させることにあるからです。

次に個人消費については2つの懸念材料があるものの、それぞれに補完材料があるので、これも懸念するほどではないと考えています。

2つの懸念材料と補完材料について説明すると、1つ目は移民政策です。違法移民の本国への強制送還や労働ビザの取得制限により、米国の労働力が減って、移民による消費の需要が減っていますが、労働力の減少で失業率が下がり、賃金が上がっています。

2つ目はAIの普及で、人間の手を介して行われているさまざまな仕事が、AIに取って代わられると言われていますが、そもそも現在の米国は労働力が不足しており、それをAIが補完するという図が描けます。

これらの点から労働力の減少は補完される可能性が高く、2026年以降の米国経済は一部に慎重な見方を要するところはありますが、総じて堅調に推移すると見ています。

欧州経済は防衛とインフラ投資がプラス材料に

――欧州のマクロ経済見通しはいかがでしょうか。

トランプ関税の影響が不安定要因ではあるものの、基本は楽観シナリオです。ドイツ政府が財政の借入制限を緩和し、防衛やインフラへの投資を増やすのは明らかにプラス材料ですし、規制緩和も米国の動きに呼応するかのように進み始めていて、これもプラス材料です。

特に防衛に関しては、ウクライナ問題が解決したら、防衛予算を増やすことへのプレッシャーが後退するでしょうが、依然として解決への課題も多いと考えています。その点からも、防衛費の増額は中長期的に続くものと見ています。

ただ、防衛やインフラ投資を進めるにしても、現時点において、財源がはっきりと見えていないのはネガティブ要因です。

――ESG(環境・社会・ガバナンス)への投資の観点から、防衛への投資はそぐわないのではないか、という意見もあります。

われわれは従来からポートフォリオから防衛セクターを完全に除外することは行っていません。なぜなら、戦争などの重大な事態が起これば、持続可能な成長が損われかねず、防衛セクターもサステナブルな成長のために必要不可欠であると認識しているからです。