各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、静銀ティーエム証券のデータをもとに解説。
静銀ティーエム証券の投信売れ筋(販売額)ランキングの2025年11月のトップは前月第3位の「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:電力革命)」だった。前月トップの「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」は第3位に下がり、前月第2位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」は第2位にとどまった。また、前月第7位だった「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(毎月決算型)」が第6位に上がり、トップ10圏外から「同(年1回決算型)」が第7位にランクインした。
売れ筋トップが毎月交代、注目される「大型ハイテク株以外」
静銀ティーエム証券の売れ筋トップが9月以来毎月、新しいファンドになっている。9月はそれまでも連続でトップをキープしていた「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」がトップだったが、10月には「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」がトップに立ち、11月は「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:電力革命)」がトップになった。
9月から11月にかけては株式市場に大きな変化があったわけではない。米「S&P500」は9月に3.53%高、10月は2.27%高で両月ともに順次史上最高値を更新する上昇となった。11月は0.13%高とほぼ横ばいの推移になった。株価が高値圏で推移する中で、売れ筋トップが入れ替わっているのは、新しいスター候補を探して投資家がさまざまなファンドを試す過程にあるのかもしれない。
2024年1月に新NISAがスタートしてから2025年の年初までの人気ファンドは、インデックスファンドでは三菱UFJアセットマネジメントが設定する「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。アクティブファンドではインベスコ・アセット・マネジメントの「世界のベスト」とアライアンス・バーンスタインの「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース(為替ヘッジなし・毎月決算型)予想分配金提示型」だった。ただ、2025年4月の「トランプ関税ショック」以降に、人気銘柄に変化がでてきた。ピクテ・ジャパンの「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」や三菱UFJアセットマネジメントの「三菱UFJ純金ファンド」など純金(ゴールド)価格に連動するファンドが人気化。また、アクティブファンドではフィデリティ投信の「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース」などに資金流入が増大するなどの動きがあった。
このようなファンドへの資金流入状況の変化は、株式市場の変化を映している。たとえば、11月には4日に好決算を発表したAI関連企業の「パランティア・テクノロジーズ」が市場期待に応えられず約8%安となり、11日にはAIクラウド・インフラストラクテャー・プロバイダーの「コアウィーブ」が弱い業績見通しを発表し16%安など、これまで米株市場をけん引してきたAI関連株が決算によって値崩れするような動きが出てきた。かねてより割高が指摘されてきたハイテク株だけに、成長力が高いと目されているAI関連で急落する銘柄が出てきたことで市場全般への警戒感が高まっている。静銀ティーエム証券の売れ筋ランキングでトップに立ったファンドは、従来の大型ハイテク株を軸にしたファンドとは異なる切り口で組成されたファンドになっている。

