経常利益上方修正期待は「その他情報通信」「物品賃貸」「建設」
続いて、12月短観の経常利益計画から大幅上方修正が期待される業種を見通してみよう(資料3)。結果を見ると、上方修正率が最も大きいのは「その他情報通信」となっている。こちらは売上高同様に、インターネット付随サービス等の需要が高まっていることが推察される。
また、「物品賃貸」については売上高も上方修正されており、業績好調な建設機械等の産業用機械や、ITサービスに対する堅調な需要拡大等に伴うオフィス機器等のリース需要拡大の影響が大きいことが予想される。
それに続く「建設」は、建材価格上昇などに伴う価格転嫁に加え、再開発や工場新設等の建設需要が高まっていることが推察される。
それに続くのが「繊維」である。ただ、売上高が下方修正となっているため、商品市況の低下等に伴う原材料価格の下落等により交易条件が改善していること等が寄与しているものと思われる。
なお、「造船・重機、その他輸送用機器」も売上高計画がほぼ横ばい修正にとどまっている中での増益率上方修正となっているため、「繊維」と同様の理由が推察される。
このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、ITサービス関連に加えて、需要拡大が見込まれる物品賃貸や建設関連、交易条件の改善効果等が見込まれる一部素材や加工業種が指摘できる。
為替レートの変動で業績が修正される可能性も
なお、12月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。
資料4にて実際に今年度の想定為替レート(大企業)を確認すると、ドル円で146.6円/$、ユーロ円で163.8円/€となっている。しかし、足元のドル円レートは150円台、ユーロ円は180円台となっている。
中でも、製造業で足元のドル円レートよりも特に円高で今期の為替レートを想定しているのが、円安の恩恵を受けやすい「造船・重機、その他輸送用機械」となっている。
なお、建設など輸入依存度もそれなりにある内需関連産業の一部では、円安でむしろ業績の下押し要因となる企業も含まれている可能性があり注意が必要だが、特に輸出関連の製造業が多く含まれる加工業種では146円/$台と円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。
以上の結果を踏まえれば、今後は欧米における想定以上のインフレ鈍化等に伴う過度な利下げ観測の強まりや、日本企業の賃上げ圧力の高まり等に伴う日銀の予想外の利上げ期待の高まり等を通じて為替レートの水準が急速に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高水準に想定している業種に属する企業を中心に、今期業績が修正される可能性があることにも注目すべきだろう。