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要旨
〇12月短観における25年度の大企業収益計画は増収減益も、売上高下方修正の一方で経常利益は上方修正。
〇売上高計画の上方修正が目立ったのが、これまでの原材料価格高騰や人材不足等に伴う人件費高騰等のコスト高に応じて価格転嫁が進んだ「鉱・採石・砂利採取」「その他製造」、万博等に伴う国内旅行やインバウンド消費が活発だったことに加え、円安や原材料高、人件費高騰などに伴う値上げも追い風となっている「宿泊・飲食サービス」、生成AIブーム等に伴うITサービスに対する堅調な需要拡大が織り込まれた「電気機械」、インターネット付随サービスなどの需要が高まっている「その他情報通信」。
〇経常利益計画を基に上方修正が期待される業種を見ると、売上高上方修正の「その他情報通信」以外に、建設機械等の産業用機械や、ITサービスに対する堅調な需要拡大等に伴うオフィス機器等のリース需要拡大の影響が大きい「物品賃貸」、建材価格上昇などに伴う価格転嫁に加え、再開発や工場新設等の建設需要が高まっている「建設」、商品市況の低下などに伴う原材料価格の低下などにより交易条件改善の「繊維」「造船・重機・その他輸送用機械」と続く。
〇大企業の想定為替レートは、2025年度にドル円で146.6円/$、ユーロ円で163.8円/€だが、足元のドル円レートは150円台、ユーロ円は180円台。中でも、今期の為替レートを143円/$台に想定している「造船・重機、その他輸送用機械」をはじめとした加工業種はむしろ円安が恩恵になるため注目。
〇今後は欧米のインフレ鈍化に伴う想定以上の利下げ観測の強まりや、日本企業の賃上げ圧力の高まり等に伴う日銀の想定以上の利上げ期待等を通じて、為替レートの水準が急速に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高水準に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性がある。
第一生命経済研究所の永濱氏が予測する2025年度の業界展望 日銀短観から見た上方修正が期待できる業種とは
国内外を覆う不確実性によって景気や市場を見通すことは困難を極めています。そこで国内屈指の著名エコノミストである、第一生命経済研究所の経済調査部で首席エコノミストの永濱利廣氏に、経済・市場の今後を読み解く手がかりになるテーマについて解説していただきました。※本稿は、12月16日掲載の第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト、永濱 利廣氏のレポート「12月短観から見た25年度業績見通し~「その他情報通信」「物品賃貸」「建設」等に上方修正期待~」を抜粋・再編集したものです。
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