業績には自信、中間配を予定どおり実施 「量から質」へ方針転換
不適切会計の全貌は調査を待つほかありません。もっとも、エア・ウォーターは事業そのものについては順調という認識です。中間決算の公表は見送ったものの、中間配当は計画どおりに実施しています。ここで同社の成長戦略に迫りましょう。
エア・ウォーターは、先述のとおり25年7月に社内で不適切会計が発覚しますが、その前月に中期経営計画を公表していました。計画期間は28年3月期までの3年間で、従来の「規模の拡大」から「収益性の追求」へ転換する内容です。同社は目標だった売り上げ1兆円は達成したものの、利益率に課題を抱えます。
収益性の追求で中核となるのが事業ポートフォリオ改革です。同社は多様な事業を展開するコングロマリットですが、なかには採算の悪いものも抱えます。これを見直し、利益率の改善を目指します。
【セグメント情報(25年3月期)】
※25年4月のセグメント変更後
事業ポートフォリオ改革において、主力である国内ガス事業は現金創出源の位置付けです。これを基盤に、余剰資金を成長事業へ投資します。成長事業は、半導体向け事業とグローバル産業ガス事業、カーボンニュートラル事業および農業向け事業を想定します。3年間では投資枠として3200億円を設定し、うち2500億円を規模拡大やM&Aといった成長投資に振り向ける計画です。
特に重点的な投資を想定するのが半導体向け事業です。半導体産業は、ラピダスがある北海道やTSMCが進出した熊本県などを筆頭に、投資が加速している状況です。エア・ウォーターの半導体向け事業には商機で、投資を集中することで収益につなげます。
一方、低採算かつ低成長の事業は見直しの対象です。期間中は改善や合理化を進めますが、それでも基準に届かない場合、他社への売却や撤退も視野に入れます。これらの戦略を実施し、課題だった低採算からの脱却を図ります。
【主な財務目標(~28年3月期)】
・営業利益率:8.5%(25年3月期実績:7.0%)
・ROE:11.0%(同9.8%)
・ROIC:7.0%(同5.5%)
※ROE…自己資本利益率
※ROIC…投下資本利益率
出所:エア・ウォーター 中期経営計画

