企業・団体が従業員の報酬満足度を向上させるカギは?
少し視点を変えて、企業・団体の立場になった時に、従業員の報酬満足度を向上させるカギは何でしょうか。
前回のコラムのとおり、年収の高さによる満足度の向上は一定程度みられます。ゆえに、賃上げなどによる報酬水準自体の向上は、有効かつ必要な策といえるでしょう。
それに加えて、ここまで見てきた家計行動に紐づけて考えると、勤労者個人の「家計行動に対する支援」も有効になり得ると考えられそうです。
例えば、職場での金融教育経験がある人は、そうでない人に比べて、報酬満足度が高い人の割合が1.7倍に増えています【図表2-1】。両者の差は、年収が上がるほど顕著に広がっていることが分かりました【図表2-2】。
【図表2-1】職場での金融教育経験と報酬満足度が高い人の割合
【図表2-2】職場での金融教育経験と報酬満足度が高い人の割合(年収別)
*本人年収について「わからない、答えたくない」との回答者を除く
また、報酬には定例給与などに加え、原則退職時に支給される「退職金」などもあります。この退職金の水準を把握している人は、そうでない人に比べて、報酬満足度が高い人の割合が1.9倍と、大きな差となりました【図表3-1】。こちらも、年収が上がるほど、この差が顕著に広がっています【図表3-2】。
【図表3-1】退職金水準の把握状況と報酬満足度が高い人の割合
*対象:会社役員・経営者を除く勤労者
【図表3-2】退職金水準の把握状況と報酬満足度が高い人の割合(年収別)
*対象:会社役員・経営者を除く勤労者 *本人年収について「わからない、答えたくない」との回答者を除く
まとめ ―「金融教育」と「退職金水準の把握」 が報酬満足度向上のカギ?―
報酬に対する満足度の向上は、賃上げ等による客観的な水準の向上も非常に大切です。一方で、個人の満足度は主観に依るところも大きく、客観的な報酬水準の向上だけでは一定程度の限界があることも示唆されています。
企業や団体にとっては、単に賃上げを実施するだけでなく、従業員が「この所得で十分に生活できる」と実感できるような取り組みが求められます。そのためには、従業員一人ひとりが金融リテラシーを身につけ、自身の家計状況を把握し、将来の人生設計に基づいた行動をとることが重要です。特に、退職金といった将来の大きな収入を認識することは、家計に対する自信や満足度に大きく影響すると考えられます。
個人にとっては、報酬の向上を目指す取り組み(スキルアップ・転職など)も非常に重要ですが、それだけでなく安心感を持って働き続けるためにも、まずは自身の人生の将来像を描き、それに向けた自律的な家計行動を起こすことが必要と思われます。
(三井住友トラスト・資産のミライ研究所 清永 遼太郎)




