リスクの低減が債券投資の魅力

例として生命保険会社を考えてみましょう。生命保険(死亡保険)は、保険会社に保険料を支払って、被保険者の死亡時にあらかじめ指定された受取人が保険金の給付を受ける保険です。保険会社からすれば、保険料という形で預かったお金を運用し、それを将来、保険金として払い戻すことになります。保険料の徴収を何年、何十年かけて行い、そのあとで保険金の支払が行われるので、平均的にみれば資金の運用期間はかなりの長期になります。

この保険料と保険金の関係は、予定利率といわれる一定の金利水準を前提にして保険数理という複雑な計算方法を使って算出されますが、保険料の運用ではこの計算に使われた金利分をきっちり稼ぐことが求められます。そのためには、余計なリスクを負わずに長期間にわたって一定の利回りを確保できる長期国債などが絶好の投資対象となります。

年金基金の場合も考えてみましょう。年金は、現役世代が納めた年金保険料を元手にして、老後世代の生活資金として給付するものです。余った年金保険料は年金基金に積み立てられ、将来の年金給付に向けて運用されます。この部分は生命保険に似て、かなりの長期間にわたる運用が必要になります。

ただし、死亡時の給付額があらかじめ決まっている生命保険に対して、年金は基本的に将来の生活資金を支援するためのものなので、物価上昇分なども補えるようにしなければなりません。

つまり、生命保険と比べると、物価上昇に強い投資対象も組み入れていく必要性が高いのです。その代表格が株です。インフレが生じると、金額ベースでみた企業収益がかさ上げされ、株の価値も増大していくと考えられるからです。

ですが、株はハイリスクでもあるので、投資対象を全部株にしてしまうと大きく値下がりして十分な年金を払えなくなるというリスクもあります。そこで年金基金では、株や債券といったインフレへの耐性やリスクの度合いが異なるものを適切に組み合わせていくことが必要になります。

こうしたケースでは、リスクの低い債券を組み入れることによって、運用資産(ポートフォリオ*)全体のリスク量を適切な範囲内に抑えるという効果が期待されます。

*ポートフォリオは、もともとは運用資産をどういう投資対象に振り向けるかを示した運用資産構成のことですが、運用資産そのものを指す言葉としても用いられます。

たとえば、景気が後退期を迎えたとしましょう。そうすると、企業利益の不振から株価は大きく下がる可能性があります。一方、債券には景気後退時に価格が上がる傾向がみられます。つまり、景気が後退して株価が大きく下がったときに、債券価格が上昇して、その損失を部分的にせよ穴埋めする効果が期待できるのです。

もちろん景気が良くなったときは逆です。債券は景気が良くなっていくと運用成績が悪化する傾向があります。株式は値上がり益が期待できますが、債券を組み入れることでポートフォリオ全体のリターンは下がってしまう可能性が高くなります。

しかしながら、ここで重要な点は、債券を一定程度組み入れることで、ポートフォリオの価値の振れ幅を小さくして、大きな損失が発生する可能性を抑制できるということです。