リスク分散を意識してアクティブファンドも選択肢に上がる

「オルカン」がトップに立った大きな理由は、「米国依存への警戒感」だろう。今年4月に世界の株式市場が大きく下落したのは、米トランプ政権による一方的な関税政策の発動があったためだった。それ以降もトランプ政権については、戦争・紛争への仲介、また、地球環境保全への協調などの分野で不安定要素となっている。米国内においても経済政策の要といえるFRBとの関係がギクシャクしている。トランプ大統領の一方的な発言やSNSへの書き込みなどによって米国の株式・債券市場が大きく荒れることがないとは言えない状況だ。資産運用の現場では、トランプ政権の米国とは距離を置きたいという考えも少なくないだろう。

もっとも「オルカン」を選択しておけば、現在のところもっとも成長期待が大きいAI関連企業など米国の主要企業への投資も継続できる。「オルカン」を選んだ投資家は、米国市場が大きく崩れた時にそのショックを軽減することが目的といえるだろう。米国企業の株価は、引き続き上昇を続けてほしいというのが本音だ。

一方、米国株式市場への警戒感がより強い投資家が選択しているのが「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」だと考えられる。11月に売れ筋トップ10にランクインしてきたが、同ファンドのパフォーマンスが良くなった結果ではない。世界の市場から「ベスト」と判断できる株式に厳選投資するというコンセプトのファンドで、10月末時点の組み入れ上位10銘柄は、英国の「3iグループ」を筆頭に、米「マイクロソフト」、カナダ「カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ」、英「ロースル・ロイス」、米「テキサス・インスツルメンツ」、香港「AIAグループ」など世界の市場に分散されている。米国の組み入れ比率は40.7%と「オルカン」よりもさらに低い水準にとどまっている。時価総額だけではなく、ファンドマネージャーの分析力や判断によって、組み入れ銘柄を変更できる点も、米国に異変が起きた時に迅速な対応が期待できると判断されたのではないだろうか。

 

執筆/ライター・記者 徳永 浩