各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、楽天証券のデータをもとに解説。

楽天証券の投信売れ筋ランキングの2025年11月のトップ2は前月と同じファンドの順番が入れ替わり、トップは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(愛称:オルカン)(設定は三菱UFJアセットマネジメント)、第2位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(同)になった。また、トップ10圏外から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)(インベスコ・アセット・マネジメント)が第8位に、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」(楽天投信投資顧問)が第10位にランクインした。一方、前月は第9位だった「三菱UFJ純金ファンド」(三菱UFJアセットマネジメント)と第10位だった「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」(アモーヴァ・アセットマネジメント)はトップ10から落ちた。

「S&P500」より「オルカン」が選好される

楽天証券の売れ筋ランキングで「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が長らくトップにあった。当コーナーが確認できるだけでも2024年5月以来18カ月間連続で「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がトップだった。米国「S&P500」指数は、世界最大の株式市場である米国を代表するような時価総額の大きな企業500社で構成される株価指数であり、AI分野などで世界をリードする米国経済の力強い成長を背景に、これまで高いパフォーマンスを誇ってきた。そのパフォーマンスの高さこそが「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の人気の背景だった。

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「オルカン」の違いは、その投資対象の多様性にある。米国株式に特化した「S&P500」に対し、「オルカン」は新興国を含む世界各国の株式を投資対象にしている。

ただ、「オルカン」も時価総額の大きな企業から組み入れているため、米国株式の比率が高く、特に組み入れトップ10の顔ぶれは「S&P500」とも似通ったものになる。たとえば、2025年10月末時点での「オルカン」は、米国株の投資比率が64%であり、組み入れ上位10銘柄は、「エヌビディア」「アップル」「マイクロソフト」「アマゾン」「ブロードコム」「アルファベット(A)」「メタ・プラットフォームズ」「アルファベット(C)」「テスラ」「TSMC(台湾半導体)」となっており、第10位の「TSMC」以外は米国企業だ。同時点の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の組み入れ上位10銘柄は第10位が「バークシャーハサウェイ」になり、上位9銘柄はそっくり同じになっている。

このため、2024年末までのように米国株式市場が世界の市場をリードする展開の時には、「オルカン」の運用成績は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に劣りながら追随するものだった。パフォーマンスだけを考えるのであれば、「オルカン」への投資は面白みがなく、より高いパフォーマンスを残している「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の方が魅力的な投資対象といえた。ところが、11月のランキングで「オルカン」がトップに立った。