ワナの正体は為替手数料
これは高金利通貨投資のワナとも言えるのですが、トルコリラや南ア・ランド、ブラジルレアルといった高金利通貨は、一般的に市場での流通量が少ないこともあって、為替手数料が高めになります。
為替手数料とは、たとえばトルコリラを例に挙げると、円を売ってトルコリラを買う、トルコリラを売って円を買い戻すというように、外貨建て金融資産の購入、あるいは売却や償還に伴って行われる外貨取引において発生する手数料です。
為替手数料は通貨によって、あるいは金融機関によって異なります。たとえば米ドルの場合、銀行での為替手数料は1米ドルにつき片道1円、往復2円ですが、インターネット証券の場合は0円というところもあります。
ただし、トルコリラになると、米ドルに比べて為替手数料が格段に高くなります。たとえば前出のJトラスト・グローバル証券で、トルコリラを売買した際にかかる為替手数料は、円をトルコリラに替える際には、1トルコリラにつき0.25円(100万トルコ以下の場合)、トルコリラを円に替える際には、1トルコリラにつき0.50円が自動的に徴収されます。つまり、円をトルコリラに替えてトルコリラ建て債券を購入し、償還までに発生するトルコリラ建ての利金を円に替えて受け取り、さらに償還時にはトルコリラを円に替えて償還金を受け取る、というそれぞれのプロセスにおいて為替手数料が掛かってくるのです。
この為替手数料を加味して計算すると、購入金額が43万6935円だったのが、償還金は31万7000円にしかならないということになるのです。もっとも、この間に受け取れる利金の合計額が15万1560円なので、それを加えて償還時点までに受け取ることのできる総額は46万8560円ですから、このシミュレーションでは元本割れを避けることはできますが、43万6935円の購入金額に対して、利金を含む償還金額が46万8560円ですから、収益率は7.23%にしかなりませんし、保有期間が約1年6カ月なので、これを単利ベースで年率換算すると、年4.82%となります。
上記債券の発行体は欧州復興開発銀行なので、発行体格付を見ると、ムーディーズがAaa、S&PがAAAという最上位格付が付与されています。が、問題は通貨がトルコリラだということです。
通貨に対する信用力が、その通貨国に対する信用力とイコールだとすれば、トルコリラの価格形成には、トルコという国のカントリーリスクが影響するはずです。
OECDカントリーリスク専門家会合が評価しているリスク・カテゴリーをベースに、日本貿易保険(NEXI)が作成しているカントリーリスクマップによると、AからHまで8段階で評価されているカントリーリスクのうち、トルコはFという6段階目に位置しています。ちなみにFのカテゴリーに含まれている、アジア・中近東の国は、トルコの他にヨルダン、ウズベキスタン、カザフスタン、ジョージアの4カ国です。つまり通貨のリスクはかなり高く、それだけのリスクを冒して実質年4.82%のリターンは、あまりにもリスクに見合わないと考えるべきでしょう。
