• 要旨

    〇国債格付けは、経済・財政指標を基にした定量評価と定性評価を組み合わせたものが評価基準とされている。日本国債の格付けは、世界三大格付け機関によって1998年以降、計16回の格下げと計4回の格上げがされている。

    〇四半期データが取れる6つの財政関連指標と3大格付け機関の平均格付けを数値化したものとの単純相関を示すと、経常収支/GDP、一般政府資金過不足/GDP、長期金利、名目成長率―長期金利といったフローデータはいずれも予想される符号条件を満たしていないのに対して、債務残高/GDPや純債務残高/GDPはいずれも相関関係が高いことがわかる。

    〇最も相関係数が高い「政府債務残高/GDP」との回帰式に基づけば、直近は三大格付け機関の1つが1ノッチ格上げをしてもおかしくない水準にあり、仮にすべての格付け機関で日本国債の各付けがAAAまで行くためには、106%程度まで下げる必要があると試算される。同様に純「債務残高/GDP」との回帰式に基づけば、直近は3大格付け機関のうち2社が1ノッチ、1社が2ノッチ格上げしてもおかしくない水準にあり、仮にすべての格付け機関で日本国債の各付けがAAAまで行くためには35%程度までの低下が必要になると試算される。

    〇財務省がまとめた格付け会社の評価項目のうち財政に関する指標を見ると、全般的にフローの財政収支よりも、包括的なストック指標を重視している傾向が見て取れる一方で、フロー指標としては、プライマリーバランス(PB)という形でみている格付け会社はなく、利払い費の情報を見ていることがわかる。

  • 〇日本ではタイムリーに公表される利払い費のデータが存在しないことからすれば、格付けにも配慮した望ましい財政目標としては、PBよりも経済規模の拡大が考慮されるストックデータを新しい目標と位置づけるべきであり、その部分的要素となるPBや名目成長率と長期金利の関係などを参考指標扱いにすることで常時観察していくというのが望ましいと考えられる。

     

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