株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町の甘味処で抹茶を飲みながら投資談義を行っています。
T:10月27日、日経平均株価が史上初めて5万円を突破しました。10月28日には米国のトランプ大統領が来日し、高市総理との会談が行われました。日米関係の強化が確認され、今後が楽しみな展開です。
神様:積極財政、金融緩和継続の政策実現への期待を反映した「高市トレード」が株価を押し上げています。今後は「サナエノミクス」の政策実行性に焦点が向かい、物価対策や景気対策の具体的な効果や内容を見極める段階に遷移していくでしょう。さて、企業のデジタル投資も加速しています。2025年9月の日銀短観によると、大企業・中堅企業・中小企業の全規模合計の全産業による2025年度(計画)のソフトウェア投資額は、前年度比で12.9%増加する見込みです。人手不足や生産性向上の課題を背景に、各企業でDXへの取り組みが盛んに行われている状況が明らかになっています。
T:2025年と言えば、経済産業省のDXレポートで「2025年の崖」と表現され、企業が課題を克服できずDXを進められないままであれば、2025年以降最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘された年です。一方で、今年は生成AIを中心としたAI活用が日常に浸透し、企業でも活用が進みました。業務効率化が進んだ企業も多いのではないでしょうか。
神様:おっしゃる通りです。企業ではシステムの刷新需要も依然として高い状態です。多くの企業でシステム更新の需要があり、AI活用もさらに進んでいくことでしょう。今後もソフトウェアへの投資は継続すると考えられます。
T:DXと言えば「レガシーシステム」の扱いが問題となっていましたね。レガシーシステムとは既存システムのことですが、データとデジタル技術を活用し、ビジネスの変革を推進するDXにおいて、老朽化しデータ連携もできない既存システムが足かせとなり、DXを進められない企業が多かったのですよね。現在はどうなのでしょうか?
神様:状況はまだまだ改善の余地がありそうです。情報処理推進機構によると、2024年度でレガシーシステムが残っていると把握している企業は約63%でした。
T:なるほど。逆に言えばソフトウェア投資拡大の余地はまだまだ大きいとも言えますね。
神様:経産省によれば、DXを阻害するレガシーシステムにはいくつかの特徴があります。技術的な観点からは、「技術の老朽化」「肥大化・複雑化」「ブラックボックス化」。経営観点からは、「IT投資がされていない」「古い制度としがらみ」です。単に古いだけでなく、保守などのシステム維持や機能の改良が困難で、運用していくに当たってはコストが高く、それが経営や事業の足かせとなるのです。
T:いざシステムを変えたいと思っても、なかなか変えられない企業の現実が垣間見えますね。レガシーシステムと縁を切るには、どうすれば良いのでしょうか?
神様:まずはIT投資を行える体力が必要です。また、企業内でのITリテラシーの醸成や人材リソースの確保も大切です。レガシーシステムから脱却し、モダンシステムへと変えるには、変化へ適応しデータの利活用ができる柔軟な技術の導入や継続的なアップデートが欠かせません。経営陣の協力と現場の協力、双方の協力がなければ進みません。
T:改めて考えると、DXって難易度が高いですね。
神様:おっしゃる通りです。システムのモダン化の契機となるのは、受動的な要因も大きいようです。すなわち、DXの必要性は「痛い目にあって初めて自覚する」のです。
T:痛い目、ですか。例えばどんなことでしょうか?
神様:例えば、システムのソフトウェアやハードウェアの保守料金がアップし、コストが経営を圧迫するようになった。または、基幹システムで障害が頻発し、さらには復旧もできない状態が訪れてしまった、などです。
T:なるほど、それは深刻ですね。ソフトウェア投資が増えているのは、そういった受動的な要因も顕在化しているのかもしれませんね。
神様:今後はDXの推進を支援する企業へのニーズがさらに高まると考えられます。日本企業のDXはまだまだ道半ばであり、多くの企業で業務改革・ビジネスの変革を必要としています。DXを支援する企業の活躍の場は今後さらに広がっていくでしょう。


