老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを開催しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いたニックネームかずっぺさんの体験談をお届けします。
退職をへて資産放置、再就職でまさかのiDeCo「元本割れ」、その後は…?
今から約10年前、私は軽い気持ちでiDeCoに加入した。「老後資金の一部になれば」というくらいの考えで、正直なところ将来への真剣な備えというよりは、とりあえず何かやっておこうといった感覚だった。
投資信託の運用経験は皆無。iDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)とNISA(少額投資非課税制度、ニーサ)の制度の違いさえ分からない完全な初心者。
内容を深く理解しないまま「非課税」という言葉にひかれ、貯金するよりはずっといいだろうという漠然とした期待があった。
損をすることへの恐れから、元本保証の安定した商品を選び、口座からは毎月2万3000円が自動引き落としされていた。
今思えば、もう少し慎重になって誰かにアドバイスを求めていればよかったと悔やまれる。運用益が非課税になる仕組みを、当時の私は全く理解していなかった。
その後、転機が訪れる。iDeCoに加入して数年も経たないうちに身体を壊してしまい、私は会社を退社することになった。そのタイミングで掛金拠出の運用は保留し、しばらく放置期間が続いた。
それから身体の回復とともに再就職し、長く忘れていたiDeCoの存在を思い出した。何年間も忘れたままの資産があることに。
そして記憶をたどりながら問い合わせをし、わくわくしながらネットにログイン。確認した金額は─完全に元本割れしていた。
リスクを取らないことに固執した結果、定期的にかかる手数料のことなど全くの無知だったのだ。自分の資金をマイナスにしてしまい、しかも7年余りもの歳月を無駄にしてしまった。
長期的な視野で資金を運用するというiDeCo本来の前提を、勉強不足が台無しにしたと痛感した。金額としてはさほど大きな損失ではなかったが、少なからず抱いていた期待が裏切られ、気持ちは深く落ち込んだ。
失敗の事実は、私に大きな衝撃を与えた。改めて自身の投資知識のなさを痛感し、一から勉強し直すことにした。
その後、iDeCoで保有していた商品をスイッチングし、今では着実にプラスの運用成績を出せている。失敗を教訓として、現在は定期的に運用状況を確認することを怠っていない。