各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、ワイエム証券のランキングをもとに解説。

ワイエム証券の投信売れ筋(販売金額)ランキングの2025年8月のトップ2は前月と同じ「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」と「netWIN GSテクノロジー株式ファンドBコース(為替ヘッジなし)」だった。第3位には前月の第10位から「ニッセイ宇宙関連グローバル株式ファンド(資産成長型・為替ヘッジなし)」がジャンプアップした。そして、第4位には前月第7位だった「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド」が上がった。また、トップ10圏外から「YMアセット・好配当日本株ファンド」が第7位に、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第9位に、「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(年1回決算型)」が第10位にランクインした。

 

「宇宙」や「モノポリー」は次のスター銘柄?

ワイエム証券は、山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行をグループに持つ山口フィナンシャルグループの一員で、東海東京フィナンシャル・ホールディングスと共同出資で2007年7月に設立された日本初の地方銀行と証券会社の共同出資による証券会社だ。

投信の売れ筋ランキングは、新しい銘柄がトップ10にランクインしてくる傾向があるようだ。それだけ、トップ10銘柄が圏外に落ちてしまうことになるが、そこで上位に定着した「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」や「netWIN GSテクノロジー株式ファンドBコース(為替ヘッジなし)」などは、数年にわたって優れたパフォーマンスを残している。トップ10銘柄の入れ替わりの動きには、次のスター候補を見つけ出したいという投資家の意欲が感じられる。

8月にトップ3に躍進した「ニッセイ宇宙関連グローバル株式ファンド(資産成長型・為替ヘッジなし)」は、日本を含む世界各国の宇宙関連企業の株式に投資するファンドだ。銘柄選定の助言は米国や英国等に拠点を置くTCWインベストメント・マネジメント・カンパニーが行っている。2025年8月末時点の組み入れ銘柄は26銘柄と厳選したポートフォリオになっており、国別比率では米国が78.2%、カナダが11.1%、フランス9.8%、日本0.9%になっている。同ファンドの9月発行の月報では宇宙関連ビジネス市場は、再利用が可能な打ち上げシステム、低コストになった衛星利用など、急速な技術の進化が商業化を促進させ、衛星データ等を活用して革新的な製品・サービスを開発する動きが加速してきていることから「景気変動の影響を比較的受けにくく、先行き不透明な環境を乗り越えていく分野」としている。2025年4月以降には「netWIN GSテクノロジー株式ファンド」を上回るパフォーマンスを記録し、今後が注目される。

また、第10位にランクインした「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(年1回決算型)」は、高い参入障壁等によって一定の地域においてモノ・サービス等を独占・寡占していると判断される「モノポリー(独占的)企業」に投資する。オーストラリアのシドニーに本拠を置くマゼラン・アセット・マネジメントが実質的な運用を担っている。具体的な投資先は、「総合電力」、「送配電」、「有料道路」などの企業で、地域で独占的に事業を提供しているという点から評価する。国・地域の分散も効いており、米国が38.4%、カナダが14.2%、スペイン11.0%、英国8.0%、イタリア5.8%などだ。組み入れ対象の上位銘柄になっている「総合電力」や「送配電」だが、AI関連の拡大で莫大(ばくだい)な電力を消費するデータセンターの新設・増設が急増しており、これが電力会社や送配電会社の業績を押し上げる要因になっているといわれている。いまだにファンドの基準価額の水準は緩やかな右肩上がりだが、他の株価が下落している時の下値への抵抗力が際立っており、このままの推移が続けば、いずれは他のファンドを上回る成績を実現するかもしれないという期待が募るところだ。