各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、浜銀TT証券のデータをもとに解説。
浜銀TT証券の投信売れ筋ランキングの2025年8月のトップは6月以来3カ月連続で「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」だった。第2位、第3位も同様に3カ月連続で「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド(予想分配金提示型)」だったが、第4位には「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド(資産成長型)」が上がった。また、トップ10圏外から第6位に「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」が、第8位に「J-REIT・リサーチ・オープン(年2回決算型)」がランクインした。
株式ファンドをしのぐ「ピクテ・ゴールド」
売れ筋ランキングのトップに「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」がきている。中には「サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジあり)」が第7位にランクインするなど、なぜ成績が優位にある「為替ヘッジなし」ではなく「為替ヘッジあり」が選ばれているのか理由の推察が難しいものもあるが、おおむね浜銀TT証券の売れ筋はパフォーマンスの確かなファンドにフォーカスしているようにみえる。ただ、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が売れ筋のトップに立つランキングは珍しい。ゴールドには配当がなく、価格変動だけを収益の源泉としたファンドは、伝統的な投資資産からはやや外れているためだろうか。同社の投資家の間では、それでもパフォーマンスが良ければ積極的に評価しても良いという姿勢が見える。
2024年1月から2025年9月19日までのパフォーマンスの実際について「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」と代表的なインデックスファンドである「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、そして、「iFreeNEXT FANG+インデックス」を比較してみると、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」の基準価額は一貫して右肩上がりで上昇を続けている。2025年9月19日時点での基準価額の水準は「iFreeNEXT FANG+インデックス」が一番良いのだが、同ファンドは2024年8月と2025年4月に大きな下落局面がある。2025年9月19日時点の基準価額の水準が高いのは、2024年に70.75%という驚異的な上昇があったためだ。2025年の年初からの上昇率は13.12%で「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」に劣っている。
「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は2024年に39.55%の上昇率だった。これは、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の40.78%よりやや劣ったものの、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の32.48%を上回る成績だった。ところが、2025年の年初から9月19日までの成績は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は4.77%と鈍化し、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」も8.99%にとどまる。一方で「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は29.58%と2024年と変わらないほどの好成績になっている。このように2年連続で30%程度の高い上昇になっていることが「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」の特徴だ。このパフォーマンスを率直に評価すれば、売れ筋ランキングのトップに立っていることが当然のように思える。