社会保障や職場の保障を知らずに、民間の生命保険に加入しすぎ

2つ目の“もったいない”は、国民皆保険、国民皆年金の日本において、民間の生命保険で保障を購入しすぎていることである。令和元年度「生活保障に関する調査」(生命保険文化センター)によると、生命保険加入率は82.1%となっている。また、「生命保険の動向」(2019年 生命保険協会)によると、支払っている生命保険料総額は33兆9159億円(平成30年度)となり、同年のGDP548兆円に対して約6.2%を生命保険料として支払っていることになり、一人あたりでは年間約26.6万円の生命保険料になる。

一方、グローバルで比較すると、日本の生命保険料(米ドル換算)は2018年の推定で334,243(百万米ドル)、世界全体の生命保険料の11.85%を占めている。2015年における日本の人口が世界の約1.7%であることを考慮すると、11.85%というのは少し払い過ぎだと感じるのは筆者だけだろうか。

このような状況の最大の原因は、社会保障(特に社会保険)の給付について理解されていないことだと考えている。老齢年金に始まり、遺族年金、障害年金、高額療養費制度、傷病手当金などの給付について理解しているどころか、存在を知っている人ですらかなり限定的という印象がある。また、日本では他国と比べて社会保険が充実していることに加えて、大企業などでは福利厚生も充実している。死亡退職金、死亡弔慰金、遺児育英年金、健保組合からの各種付加給付など、現在でも一部の大企業ではこのような手厚い保障が見られる。しかし、FPとして家計相談を受けていても、こういった福利厚生を理解している会社員の方は少数派で、多くの方は存在すら認識していないようである(ちなみに、筆者自身も前職の会社員時代はそうだった)。

さらに、ご相談を受けていて感じるのが、福利厚生の手厚い大企業にお勤めの方ほど民間の生命保険に加入しており、むしろ本来は加入の必要性が高いと思われる個人事業主・フリーランスの方が生命保険にあまり加入されていないということである。こういった現状を改善するために効果的なのは、学校教育において社会保険の内容を丁寧に伝えていくことではないだろうか。国民皆保険、国民皆年金であるからには全国民が理解しておくべきだろう。もちろんFP相談の現場や、各種メディアなどを通じて適切な情報を継続的に発信していく取り組みも重要だと考えている。