世界第2位と言われる日本の個人金融資産は、2019年12月末で約1903兆円。日本人がより幸せを実感していくためには、3つの“もったいない”を少しでも解消して、お金をより上手に使っていく(well spent)ことが大切なのではないだろうか。日本の個人金融資産1903兆円を一人あたりに換算すると約1497万円、一世帯あたりでは約3560万円となる。単純に平均値で議論すべきではないが、多くの人が悲観し不安に感じるほど厳しい状況とも思えない。今回は、筆者が考えている、日本人のお金の使い方に関する3つの“もったいない”ことと、それぞれの解決案についてご説明させて頂きたい。
個人金融資産が財産所得の獲得に十分貢献していない
1つ目の“もったいない”は、個人金融資産のアセットアロケーションに関するもので、約53%が現預金のため、資産運用による所得(財産所得)がかなり限定的になっている点である。いわゆる「貯蓄から資産形成(投資)へ」が進んでいない点である。家計にとってどのくらい現預金は必要なのだろうか。一定の仮定を置いて試算してみると次のようになる。1ヶ月の生活費を37.6万円、各家計で1年分の生活費は生活防衛資金として現預金で保有すると仮定すると37.6万円×12ヶ月×5,344万世帯=241兆円となる。さらに、65歳以上世帯員のいる2171万世帯では老後資金のうち1000万円を全額現預金として保有する(1000万円を上回る部分は有価証券等の運用にまわす)と仮定すると、2171万世帯×1000万円=217兆円となる。つまり、単純に、全世帯の1年分の生活費および一部の高齢者がいる世帯で追加的に1000万円を現預金として保有すると仮定すると、必要な現預金は合計458兆円ほどになるわけである。
細かく言えば、教育費や住宅購入資金、個人事業主の方の運転資金などもあるだろうが、現在の現預金1007兆円と比較すると、あと200~300兆円くらいはリスク資産として運用してもよいのではないだろうか。仮に100兆円を利回り4%で運用できたとすると年間4兆円、1世帯あたり年間7.5万円ほどの財産所得が生まれることになる。家計の中には、追加的にリスクを取って増やす必要性が高くない富裕層の方もいらっしゃると思うが、そういった方も運用して増やしつつ、その運用収入の一部を定期的に寄附にまわすことで、国民全体がより豊かになっていくのではないだろうか。
このように現預金からリスク資産への資金シフトが進むためには、各家計の適切な金融リテラシー向上に加えて、確定拠出年金におけるデフォルトファンドの半ば強制的なリスク資産化など、個人金融資産を動かしていく仕組みが重要だと考えている。