5月15日に楽天証券がiDeCoの運用商品を除外すると発表しました。しかし、その2週間後、この除外の実施を延期する旨を通知しました。現時点では、加入者にとって不都合なことは何も起きていませんが、今回の一件を受けて、加入者が取っておきたい行動や知っておきたいリスク、さらには資産形成をしたいすべての人に共通して言える日常生活でのリスク管理についてもお伝えします。

iDeCo除外発表から延期までの経緯

楽天証券は2025年5月15日、iDeCoの商品ラインナップから9本のファンドを除外する方針を発表しました。実際、除外するには該当ファンド保有者の3分の2以上の同意が必要とされています。加入者には「除外に同意しない場合は、フォームから同意しない旨の意思を表明する、同意する場合は回答不要」という方式で意向確認が行われました。

除外対象となったのは、セゾン資産形成の達人ファンド、iTrust 世界株式、フィデリティ・日本成長株・ファンドなど、すべてアクティブファンドです。除外理由は、セゾン資産形成の達人ファンドについては「パフォーマンスが基準を下回ったため」、その他ファンドについては「パフォーマンスが基準を下回ったため」「ファンドの残高・拠出金額・受益者数が基準を下回ったため」とされています。

筆者としては、アクティブファンドには独自の運用哲学があるため(ないファンドもありますが)、良いパフォーマンスを出すのは当然ではあるものの、運用哲学に基づき運用している以上、唯一無二の存在であり、単にパフォーマンスのみで他ファンドと比較をするのは加入者の利益と必ずしも一致しないのではないかと考えます。

実際、セゾン投資の運用方針に共感し積み立てている筆者のお客様もいますし、「今まで資産が右肩上がりで増えてきたから、これからも続けたい」という人もいます。また、「不同意を表明しない限り同意したことになる」回答方式に疑問を感じた人もいるようでしたが、この点については、同意・不同意を示さない場合には、法令上、同意したものとみなすことが認められているため、楽天証券の意向確認方法としては問題ないかと思われます。

なお、楽天証券の発表に対しセゾン投信は重要なお知らせとして「納得のいく説明がなかった」「除外を受け入れられない」とホームページ上で遺憾の意を表明しました。実際、達人ファンドは年換算収益率が約8%、外部評価機関からの評価も高く、さまざまな賞を連続受賞しているため、パフォーマンスが下回ったという理由には納得いかないのは当然でしょう。

そして、何よりこの説明だけで納得いかないのは、これら商品を積み立てている加入者ではないでしょうか。除外理由の正当性を自分で確認することは困難ですから「え? そうなの? 仕方ないのかな」と自分の意見をまとめられないまま、不同意の意思表示をしない人もいたかもしれません。