ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being、以下FWB)は、「自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることにより、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られる状態」のことです。第4回では、FWB度が高い人の特徴として、金融教育を受け、収支を把握し、ライフプランを立て、公的年金の受給水準を知り、必要に応じて専門家に相談し、資金準備をしているといった特徴が挙げられました。人生の三大費用ともいわれる「住居購入、子供の教育、老後生活」のうち、今回は「老後」にスポットを当ててみましょう。

●前回記事:【思い描いたライフプランを実現する時のポイントは? 押さえておきたい「目標額の未達リスク」と「不測の事態への備え」】

老後資金の不安と公的年金の役割

ミライ研の調査によると、老後資金に不安があるという人は約半数に達しています(図表1)。お金の不安のうち老後資金不安は年代を問わず悩みのトップとなっています。確かに、何歳まで生きるかわからない老後に向けて不安を持つこと自体は、人の「さが」ともいえるものですが、だからこそ公的年金があります。就職すると親元を離れることも多く、高齢者を家庭内だけで支えるのは難しい世の中になっています。公的年金は、老後への備えを個人や家庭だけで行うのではなく、みんなでみんなを支え合う仕組みにしたものです。

現役期に保険料を支払うと、直接的には年金をいま受け取る人の資金になりますが、保険料を納めることにより、年金を受け取れる「権利を買っている」側面もあります。厚生年金保険では給与や賞与の水準に応じた保険料となっており、支払った保険料が多いほど、受取額も多くなる仕組みになっています。

個々人の寿命を予測することは難しいですが、国民全体の寿命は国が推定しており、集団で見れば比較的安定しています。国民全体で支え合う公的年金は、生涯受け取れることや、ある程度インフレに対応した金額を受け取れることを考えれば、老後の重要な収入源といえます。インフレや長寿の環境において、公的年金への期待は高まっており、公的年金について学ぶことが老後資金不安の解消に重要と思われます。