母に相談してみると

彩香はリビングのソファに腰を下ろして、スマホから聞こえる声に耳を傾けた。困ったときに相談する相手は、10代のころから決まっている。

「へえ……あの祐ちゃんがねえ」

「そうなの。もうこっちはびっくりよ。なんでそんなことするの? って感じ」

電話の相手は、母。現在は、彩香の兄夫婦と中学生になる孫と一緒に暮らしている。

「最近の子はね、お金を使ってるって感覚がないのよ」

「どういう意味?」

「ほら、最近は何でもかんでもキャッシュレスで現金を使う機会がないじゃない? 便利だけど、ありがたみがないのよねえ」

母の声はいつもと変わらず穏やかで、それでいて少しだけ呆れたような響きもあった。

「うちの紘ちゃんもそうよ。スマホにチャージされた残高で、ゲームのガチャ? っていうの? それに何万も使ってるのがバレて、もう大変だったんだから」

「へえ……中学生でもそうなんだ」

「そうそう。どれだけしっかりしてても、子どもは子ども。お金の大切さなんて、まだちゃんとはわかってないわよ」

母の言葉は、まっすぐで飾らない。その分、ガツンと響いた。

「そうだよね……ありがとう。もう一度祐太と話してみる」

通話を終え、スマホを置いたあと、彩香は、もう一度ソファに深くもたれかかった。

●再度、祐太と話し合う機会を設けた彩香はしっかりものだと思っていた息子の思わぬ一面を知る。そして、再発を防ぐための取り組みを息子と共に考えるのだった。後編:【スマホを使い同級生におごりまくっていた息子に母が伝えたキャッシュレスの罠と二人が作った誓約書の中身】にて詳細をお届けする

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。