息子がしていたこと
授業参観の帰り道、足早に校門を出たところで彩香は顔見知りの保護者に声をかけられた。
「あっ、芝浦さん。今、ちょっといい?」
「ええ、どうかしたの?」
立ち止まって首をかしげると、彼女は少し言いにくそうに口を開いた。
「いやあ、実はうちの子がね、祐太くんから時々お菓子もらってるって言ってて」
「え、お菓子? いつ渡したんだろう?」
「ほら、最近の子って、下校中とか塾の合間にコンビニ寄ったりするでしょ? で、祐太くん、結構他の子に奢りまくってるみたいなのよね。お菓子とか文房具とか色々……」
その言葉に、彩香は笑顔を浮かべたまま固まった。
「一応うちの子には、自分の分は自分で払わないと駄目って注意したんだけど……コンビニ行くたびに祐太くんに払ってもらってる子もいるみたいで……ちょっと心配になったの。お金のことだし……」
「そうだったんだ……教えてくれてありがとう」
その後、お菓子代の返金を固辞して、なんとか彼女とは別れたものの、彩香の心はざわついていた。
祐太には、交通系ICの利用を許可している。塾への往復だけでもそれなりにかかるし、自販機や駅ナカでの買い物も多少は仕方ないとは思っていた。しかし、祐太のスマホの利用明細を改めて確認したところ、その利用履歴は、彩香の想像を軽く超えていた。
先月だけで、合計で3万円を超えるチャージ。友達に奢りまくっているという話もうなずける。どうして今まで気づかなかったのだろう。彩香は、思わず頭を抱えた。