インデックス投資への“信奉”もまた考え直すべき

日本では、バフェット信奉と並んで「インデックス投資の長期積立こそが正解」という見方も広がっている。NISAの普及もあり、「毎月積み立てていれば将来は安泰」といった空気感も強まった。

もちろん、分散・低コスト・長期投資という考え方は基本的に合理的であり、多くの投資初心者にとって有効な選択肢であるだろう。

ただし、インデックス投資も、唯一の“絶対解”ではないという視点を忘れてはならない。

「手数料が悪」というもう一つの思考停止

バフェット信奉やインデックス信仰と並んで広がっているのが「投資商品の手数料=悪」という考え方、むやみに金融業者の手数料を目の敵にする風習だ。

この見方が根強く存在する背景には、これまで日本の金融機関が顧客本位とはいえない商品設計や販売を行ってきたことによる不信感もあるのだろう。超ハイリスク投資を複雑な仕組みで高値で販売する類の商品が、”法外な手数料”とみなされて批判を受けたこともある。

ただし、「安ければ良い」という単純な考えに陥ると、投資の本質を見誤る可能性がある。

実は投資の成果に影響を及ぼすのは「手数料」よりも「価格」であることが多い。つまりどの資産を、どの水準で買うかが最も重要なのである。 例えば、プライベートアセットのように投資にあたり専門的で高度な知見を要し、価格も相対の交渉で決まることが多い投資対象であれば、その道のプロに支払う手数料は、十分に対価に見合うとも考えられる。手数料の大小だけでなく、「その対価として何を得られるか」を冷静に見極める目線が必要だ。

少しずつ“自分の判断軸”を育てていく

ここまで述べてきたのは、特定の人物や手法を無条件に受け入れることのリスクだ。ウォーレン・バフェット氏の投資哲学にせよ、インデックス投資にせよ、もちろんそれぞれ一理はある。

それらの共通点は非常にシンプルで分かりやすいことであり、だからこそ広く支持が集まったようにも思える。ただ、単純なことが唯一の正解ではない。

日本で広く信奉されている理論が世界の投資潮流の「先端」かといえば、必ずしもそうではない。世界では、プライベートアセットまで組み入れた分散投資の議論が主流になりつつある。

私たちも、人生に多大な影響を与えうる資産運用についてはシンプルな一元論に陥ることなく、多様な視座を持ってリテラシーを高めていきたい。