ファンドの投資手法は時間とともに変化

米国のブランデスは2000年代に小野薬品やロームなどに株主提案を行ないましたが、近年は株主提案を行なっておらず、普通のバリューファンドに変わりました。いちごアセットマネジメントは、2007年に東京鋼鐵と大阪製鐵の経営統合に介入して、「いちごの乱」と呼ばれましたが、アクティビスト的な介入はこの一度だけでした。学者の論文等では、過去に株主提案を一度でも行なうと、アクティビストに分類されることがあります。

世界最大のアクティビストである米国のエリオット・マネジメントは、2019年までは香港オフィスから経営統合に関与する投資などが多かったものの、担当者が代わったことで、最近はロンドンオフィスから三井不動産や東京ガスなど保有不動産に着目する投資が増えています。

東芝への投資ではエフィッシモキャピタル、エリオット・マネジメント、3Dインベストメント・パートナーズなど多くのアクティビストが巨額の利益を手にしました。3Dインベストメント・パートナーズは最近、富士ソフト、サッポロHD、ワコールHDなど保有不動産に着目する投資が多くなっています。

AVIは普段は水面下で投資先企業とソフトな対話を行なっているものの、エスケー化研などどうしても合意できなかった案件だけ、正式な株主提案を行なっているようです。エスケー化研に対しては4年連続で提案しました。

アクティビストは、マスコミに目立つようにパブリック・キャンペーンを行なうか、目立たないように行動するかによっても分けられます。オアシスやエリオット・マネジメントなどがマスコミに出ることが多い一方、東芝や富士ソフト等に投資した米国のファラロンはロー・プロファイルを維持しています。ファラロンのパートナーである今井英次郎氏は弁護士資格を持ち、2022年から東芝の社外取締役を務めています。

●第2回は【なぜ同じ企業が次々と狙われるのか…アクティビストに“選ばれる”日本企業の実態】です。(5月20日に配信予定)

外国人投資家の思考法と儲け方

 

 

著者名 菊地 正俊

発行元  日本実業出版社

価格 1,870円(税込)