「老後は持ち家」のほうが安心度は高い?
経済的な損得については、とても微妙なところです。「賃貸vs持ち家」損得シミュレーションは雑誌やネットの人気記事のひとつですが、パラメーターを少し変えるだけで勝敗はどちらにも転びます。
・賃貸派の家賃を低く設定するか
・住宅ローンの借入額や金利をどう設定するか
・マイホームの維持コストをどう設定するか
など、年1%あるいは月1万円くらいの数字を変えただけで試算は大きく変わってくるのです。
もし、確実なことを言えるとしたら、老後のことを考えればマイホームのほうに分があるように思います。というのも、老後の家賃確保というのはなかなか難しい課題だからです。
国の年金水準は、マイホームに住む人を前提に日常生活費を意識した設定をしていると考えられます(公式にそう表明しているわけではありませんが)。データ的には家賃を除いた老後の日常生活費と公的年金収入がほぼイコールです。賃貸の人だけ家賃手当が上乗せされることはありません。
そうすると、生涯賃貸派の人は現役時代に「老後の家賃分の貯金」をしておく必要があります。仮に月6万円の部屋に住むとしても、老後が25年(90歳まで)なら1800万円、35年(100歳まで)なら2520万円も必要です。
私はこれを「老後の家賃2000万円問題(いわゆる老後に2000万円とは別)」と呼んでいます。しかもこの問題の厄介なことは「家賃が何年分必要か、65歳のリタイア時点では分からない」ということです。90歳になったらまだ元気だけど家賃予算がゼロになった、では困ります。
マイホームの住宅ローンを返し終わった人はこの心配はありません。マイホームも、固定資産税だったり、修繕積立金やリフォーム費用などがかかりますが、家賃を負担し続けるほど大きな負担にはならないでしょう。
老後の不安は大きい中、さらに住むところの不安を抱えていくのはやはり長いセカンドライフにとって好ましくありません。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所の「住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2024年)」によれば、60歳代の回答者の幸福度は、ずっと持ち家である場合と、ずっと賃貸である場合で大きく違っています。ずっと賃貸であるほうが安心感は低いようです。
人生を長く捉えた場合、持ち家人生のほうがウェルビーイングが高いように感じます。