4月15日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、あらたな法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk(トランク)」の提供を発表した。その発表会が開催され、三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 中島 達氏、三井住友カード 代表取締役 社長執行役員CEO 大西幸彦氏、インフキュリオン 代表取締役社長 CEO 丸山弘毅氏がそれぞれ登壇し、当サービスのコンセプトや魅力、開発の狙いについて説明した。

中島 達氏(中央)、大西幸彦氏(左)丸山弘毅氏(右)

まず、Trunkとは「口座、決済、経理、資金繰りなど企業経営に欠かせないお金回りのサービスを、デジタル、モバイル、AIをキーワードにシームレスにご提供する全く新しい法人向けのデジタル総合金融サービス」と中島氏がコンセプトを説明。法人のなかでもとりわけ中小企業を主なターゲットとしている。

 
 

Trunkのサービスのポイントは主に3点ある。

1.メガバンクとして画期的な法人口座

一般に1カ月かかるケースもあるなど、時間がかかりがちだった法人の口座開設を最短翌営業日で可能に。また振込手数料も業界最低水準を実現。

2.金融・決済サービスがシームレスに融合

ビジネスカード、経理DX機能、決済、口座、多様なファイナンス機能……会社経営に必要な金融決済関連機能を1つのアプリでシームレスに。なお、カードの利用限度額は最大10億円、新たな与信AIエンジンを採用している。

3.先進的で多彩な新機能

例えば、請求書をスマホで撮るだけでデータ化されて取り込まれ、振込予約まで完了する機能、支払い方法をアプリ上でカード払いに変更し、支払期日を繰り延べられる機等、今までにない機能を今年度中にリリース予定。

さらにAIを活用し、財務方針を入力するだけで、最適な資金調達をリコメンドしてくれる機能なども計画されている(2026年度中予定)。

Trunkを提供する背景について、中島氏は「SMBCグループは、重点課題の1つとして、日本の再成長に貢献すると掲げてきた。日本の再成長を確かなものにしていくためには日本経済の強さの根幹となる中小企業を含む幅広い事業者のさらなる活性化が欠かせないと考えている」としたうえで、「現在、人手不足やDX推進、キャッシュマネジメント等で課題を抱える企業が多い中、Trunkは多くの企業にとって、その成長をサポートするツールになると信じている」と話し、自信を見せた。

日本において、全企業のうち約99%を中小企業が占めているが、大企業のように自らDX化を進められる中小企業は少ない。さらに人手不足も深刻化するなかで、経営者が自ら財務経理も一手に担っているケースも多々ある。そのために経営者は本来集中すべき意思決定などに“手が回らない”状況が生まれ、スピード感のなさにつながっていることは否めない。

そのような現状に対し、大西氏は「経営者に、Trunkを通じて信頼できる経営参謀のようなデジタルパートナーサービスを提供できればと考えている」と語った。なお、今後の展望は「3年で30万口座を目指す」とし、300万社とされる国内法人の1割を目標とする。また預金残高の目標としては、「1社1000万円として、3兆円」であるともコメントした。

 

インフキュリオン社はTrunkにおける、外部パートナーのうちの1社で、決済基盤となるプラットフォーム構築で参画している。丸山氏は今回のプラットフォームについて、従来は「銀行、カード会社、業務DX……それぞれにサービスが提供されていて、皆さん(経営者)もそれぞれで使い分ける前提だったと思われる」とし、「しかし経営者は、売上、支払はいくら、銀行残高は今いくら、と全て一体で見ているので、従来の“縦割り”では使い勝手がいいとはいえなかった。こうした部分を経営に即した形に変えないといけない。今回はそれを実現できた」と語った。

 

「中小企業のお客様にしっかりと成長をサポートするようなサービスが提供できていたのかという反省がある」(中島氏)というコメントもあったが、それは裏を返せば、あらたなターゲットにビジネスを展開する、戦略的に大きな意味もある。

同グループが手がけるリテール向け総合金融アプリ「Olive」はサービス開始から2年で500万アカウント突破と快進撃を続けている。Trunkには、このノウハウも生かされているという。

中小企業にとって、長年課題とされてきた経営の効率化を金融の側面から大きく変える可能性を秘めたTrunkが今後どのようにユーザーを広げていくのか注目といえるだろう。

Trunkは5月下旬よりサービス開始予定。機能は順次追加されていく。