一人で店に通うようになり
流星は〈ペガサス〉では古株のホストで、ナンバー1になるような人気と野心はなかったが、落ち着いていて女性の扱いもお手の物。
かすみが口にする旦那の愚痴も、表情ひとつ歪めることなく耳を傾けてくれた。
『旦那さんの話はそのへんにして。僕のことも見てください』
流星の黒く澄んだ瞳に見つめられて、かすみはうなずくほかになかった。まだ大してお酒も飲んでいないはずなのに、身体が火照っているような気がした。
以来、かすみは一人でも店に通うようになった。
「また会えてうれしいけど、大丈夫? 無理しないでよね。俺はいつでもかすみさんのこと待ってるから」
かすみの髪を撫でる流星の手首から甘い香水が香る。深く息を吸いこんだだけで、かすみは頭の奥がしびれていくのを感じる。
「無理なんてしてないわ。流星くんは私の癒しなの」
流星の胸に寄りかかる。甘い匂いに包まれながら、かすみは何本かお酒を注文し、飲んでいるうちにさらに気分がよくなったので、12万円のシャンパンタワーを入れた。
会計は20万ちかくにまでふくれていたが、流星の喜んでいる顔を見れば大した問題ではないように思えた。