中国経済の減速によって、インドの注目度がより増してきた
インドが注目されているもうひとつの理由は、中国経済の減速です。
中国は世界一の人口を擁し、1990年代以降は「世界の工場」という位置づけで急速に発展してきました。人口が多い分、安い労働コストで人を雇えることから、多くの海外企業が労働集約型産業を中心にして、中国に生産拠点を設けました。
それにより中国経済は飛躍的に発展し、2003年から2007年までの実質経済成長率は2ケタに乗せ、2007年に至っては14.25%もの高成長率を実現しました。そして、その後も経済成長率が1ケタになったとはいえ、あのリーマンショックの最中でさえも、9%台を維持してきたのです。
しかし、こうした高い経済成長の裏側で、さまざまな歪みが生じてきたのも事実です。
中国の経済発展は、鄧小平氏が1992年1月から2月にかけて、武漢や深セン、珠海、上海などを視察し、改革開放路線を強固なものとしたことがきっかけですが、2012年11月から共産党総書記、2013年3月から第7代国家主席となり全権を掌握した習近平国家主席は、国内においては管理社会・監視体制をより強固なものとし、対外的には領土・領海を拡大する覇権主義を採ってきました。中国の覇権主義は米中対立を生み、第一次トランプ政権から現在に至るまで、関税の引き上げを含む米中貿易戦争は激化しています。
そしてこの間、中国経済が発展したことで労働コストが上がり、中国は先進国企業の生産拠点としての魅力を失いつつあります。
それに加えて不動産バブルの崩壊懸念です。懸念というよりも、すでに現実問題になっているとも言えますが、中国が抱える不動産関連の不良債権額は、日本に長期デフレをもたらした80年代バブルで蓄積された不良債権とは額がケタ外れに多く、それが今後の中国経済にとって、重石になると見られています。