三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投信売れ筋ランキングの2025年1月のトップは前月第3位から「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がジャンプアップした。第2位には前月トップの「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が後退し、第3位には前月第5位だった「eMAXIS 日経225インデックス」が浮上した。売れ筋トップ5の顔ぶれには変化がなかったが、インデックスファンドが浮上し、その分はアクティブファンドが後退するという動きになった。
◆インデックスファンドの2強は?
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の売れ筋をみていると、インデックスファンドの2強は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS 日経225インデックス」で決まってしまったようにみえる。いうまでもなく、「S&P500」は米国を代表する株式インデックスで、「日経225(日経平均株価)」は日本を代表する株式インデックスだ。
米国株に関しては、「S&P500」とともに「NYダウ」、あるいは、「NASDAQ総合」が代表的なインデックスとして知られ、「NYダウ」やNASDAQ上場の時価総額上位100銘柄(金融を除く)で構成された「NASDAQ100」に連動するインデックスファンドが国内でも組成、運用されている。その中にあって「S&P500」が圧倒的な存在感を示している。国内株に関しては「日経225」か「TOPIX(東証株価指数)」の二者択一といえるが、昨今では「日経225」がインデックスファンド投資の主流になっている。
一方、日米株式市場以外の投資区分としては、「先進国株式インデックス(主にMSCIワールド)」、「新興国株式インデックス(主にMSCIエマージング・マーケット)」、そして、「全世界株式インデックス(主にMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」があるが、今では、「先進国株式インデックス」と「新興国株式インデックス」の人気は大きく後退し、新NISAが始まった2024年1月には爆発的な人気を集めた「全世界株式インデックス」も徐々に人気が衰えてきている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の売れ筋ランキングでも、2024年10月まではトップ5に「S&P500」、「日経225」と並んで「全世界株式インデックス」がランクインしていた。それが、11月からは「S&P500」と「日経225」だけになり、「全世界株式インデックス」に代わってアクティブファンドがランクインするようになった。
このような売れ筋ランキングにおけるインデックスファンドの選好は、個々のファンドのパフォーマンスを見たうえでの投資判断の結果といえるだろう。本来であれば、国民が資産運用を始めるにあたって第一の投資対象として意識されるのは自国の株式であろうから、「日経225」についてはもっと人気が強くてしかるべきといえる。しかし、日本の経済政策や金融政策に対する投資家の評価が低いためか国内株式への需要が高まらず、代わりに米国株式が投資の第一歩としての主流になっている。コロナ・ショック以降に円安が続いたことも資金の海外流出を後押しした。
そして、海外株式インデックスの資産構成における米国株式の比率は圧倒的だ。「先進国株式インデックス」では77%超がアメリカに配分され、「全世界株式インデックス」でも66%超がアメリカだ。しかも、基本的に時価総額加重平均で組み入れ銘柄を決定するため、ポートフォリオの上位は、アップル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラという米国の大手企業が同じように並んでいる。ポートフォリオの内容に大きな違いがないのであれば、パフォーマンスが一番良い「S&P500」に資金が集中するのは当然のことだ。そして、ポートフォリオの中身が変わらない海外株式インデックスファンドのみへの資金集中にリスクを感じる投資家が海外株式のアクティブファンドに資金を振り向けているのだろう。米国株式市場が大崩れしない限り、この人気の図式は続いていくものと考えられる。