株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。

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神様:Tさん、2月13日は何の日か、ご存知でした?

T:何かありましたでしょうか?…思い浮かびません。

神様:2(に)、1(い)、3(さ)で「NISAの日」です。NISA(少額投資非課税制度)は、2014年1月にスタートし、今年で11年目を迎えました。2024年1月からは非課税期間が無期限になり、年間投資枠が拡大し、より多くの人に利用されるようになっています。金融庁によれば、2024年12月末現在の口座数(速報値)は2560万4058口座、成長投資枠と積立投資枠をあわせた年間買付額(新規)は17兆4485億2714万円です。

T:ものすごい投資額ですね。NISAを通して投資に初めて触れた人も多いと思います。今後も成長を楽しみにしていきたいですね。

神様:さて、今日は船舶関連の企業に注目しましょう。現在、世界の海運・造船業界では大きな変化が起こっています。近年の世界の新造船竣工量は年間6,000万総トン前後で推移してきましたが、2024年1月~9月では前年同期比2割増で推移し、2024年は11年ぶりに7,000万総トン超の水準に回復する見通しです。

 

T:竣工量が上向いているのはなぜでしょうか?

神様:背景には、2つの運河の状況があります。ひとつは「スエズ運河」です。スエズ運河は地中海と紅海を結び、ヨーロッパからインド洋・太平洋沿岸地域の海上輸送に大きな役割を果たしています。近ごろはイエメンの反政府勢力による船舶攻撃が多発しており、通航する船舶数が減少しています。安全のためにスエズ運河経由を避け、「喜望峰ルート」と呼ばれるアフリカ大陸の最南端を回る航路を選択する船舶も多く、航路が長期化しています。

T:なるほど。もうひとつの運河は何でしょうか?

神様:「パナマ運河」です。南北のアメリカ大陸をつなぐパナマ地峡にあり、大西洋と太平洋を結ぶ海上交通の要衝です。パナマ運河では、2023年末から2024年初めにかけて水不足が深刻化し、通航制限を行っていました。

T:なぜ水不足で船舶の通行を制限するのでしょうか?

神様:パナマ運河を通るためには、途中で海抜より高い湖を通る必要があり、船舶の移動に大量の水が必要とされるためです。現在は通航制限が解除されているようですが、通航遅延や別ルートの選択の影響により、スエズ運河と同様に航路が長期化し、船の稼働日数が増加している状況です。

T:なるほど。

神様:船の稼働日数が増加するほど、船の総数は不足しますから、新しい船を造る動きが活発になります。

T:それで、新しく造られる船の量が増加しているということですね。

神様:しかし一方で、造船が完成するまでには長い時間がかかります。すぐに保有数、載貨重量トン数を増やすことが難しければ、既存の船の設備を整備する需要が拡大していくことが考えられます。日本は船舶装備品などでは世界的に高いシェアの製品分野が多くありますから、ここは期待したいところです。また、世界の「船種別船腹量」を見ると、約半数近くが「バルカー」と呼ばれる「ばら積み貨物船」が占めています。「ばら積み」とは積み荷を梱包せずに運ぶことですが、バルカーでは主に鉄鉱石、石炭や穀物などを運びます。景気が良好な際は、石油等のエネルギーや鉄鉱石等の資源需要が上向くことが考えられ、輸送量が増えることも予想されるでしょう。

 

T:今後さらに船舶ニーズが高まる可能性があるということですね。

神様:その通りです。一方で、船は多くのエネルギーを消費し、二酸化炭素も排出します。造船業界でも、環境に配慮しつつ燃費の改善への取り組みが増えています。今こそ、日本の造船業の”底力”を見せるときではないでしょうか。

T:パナマ運河の水不足は地球温暖化による影響も指摘されているようですね。環境に優しい船が増えることを期待したいです。