「2,000万円問題」軽減へのひとつの解?

もし、若年層が実践している「負債返済と資産形成の両立」が今後も持続し、更に若い世代にも定着していくとすれば、それは、「住宅ローンの返済が一段落してから資産形成に取り組む」という、長らく続いてきた日本人の行動パターンが変わることを意味します。

この変化は、インフレ社会が到来し、今まで以上に資産形成をしっかり行っていく必要がある日本においては、ある意味望ましいことかもしれません。

これだけ住宅価格が上がり、ローン返済期間が長期化すると、返済が終わってからでは「時間を味方につけた資産形成」がままならず、老後資金の十分な準備が難しくなる可能性もあるからです。

もちろん、資産形成に重きを置くあまり負債の返済が滞っては元も子もないですし、資産形成の手段がリスク資産投資に偏りすぎれば、「負債とキャピタルロスの両抱え」というあまり考えたくないリスクもあり得ます。しかし、バランスに配慮しながらの「返貯両道」は、「老後資金2,000万円問題」軽減へのひとつの解となり得るのではないでしょうか。

この過程で、金融教育の普及→金融リテラシーの底上げ→資産形成へのプラス効果-といった正のスパイラルの発生にも期待したいと思います。

(筆者:三井住友トラスト・資産のミライ研究所 主任研究員 青木 美香)