「103万円の壁」議論も関係? 「個人向け減税」を希望する企業が増加

景気回復に必要な対策として、どのような政策が待ち望まれているのか。調査結果では、最も回答率が高かったのは「人手不足の解消」で40.5%。一方で前回か6.5%上昇し僅差で2位だったのが「個人向け減税」で39.6%。現在話題の「103万円の壁」議論はまさにこの2つに関わる政策だ。

年収103万円を超えると所得税が発生することから、103万円未満になるように働く時間を調整する人が多いと言われる。壁を引き上げれば、実質的に個人向け減税にもなるし、一人当たりの働く時間が増えれば人手不足の改善にもつながるというわけだ。

逆に前回から8.4%ダウンしたのが「原材料不足や価格高騰への対策」(26.2%)。円安の懸念が薄らいだこともあってか、優先度は下がっているようだ。

出所:帝国データバンク 「2025年の景気見通しに対する企業の意識調査」

「世界・国内ともに社会情勢が混沌としていて、見通しは厳しいと考えている」 企業の生の声を紹介

最後に調査に寄せられた企業のコメントを紹介しよう。

「更なる電力値上げや原材料・物流費の高騰など各種コストアップによる企業の収益悪化に加え、消費者心理の冷え込みにより先行きが見通せない」(飲食料品・飼料製造、愛媛県)、「今後も円安の傾向、原価高騰、人件費高騰など経費の高騰のなか、売り上げが減少となる見込みで対策を検討している」(家具類小売、東京都)、など引き続き円安や物価高騰を警戒する声があった。

しかし為替については、「物価高、円高となれば輸出産業への悪影響は免れない。また、アメリカの景気減速の懸念もあり、国内外の需要は減る可能性がある」(輸送用機械・器具製造、茨城県)、といった声も。

円安で業績が好調な業種もあることから、円安を是正すれば一件落着という単純な話ではないのかもしれない。

一方で楽観的な意見としては、「旅行、インバウンドのお客様増が明るい要素である。電気代、ガス代、水道料金の高騰などは下振れ要因であるため国の施策に期待」(不動産、長野県)、「ある程度は企業の設備投資が進み景気循環の下支えが進んで行くのではないかと考えている」(機械・器具卸売、愛知県)、「減税への期待感が高まるなかで期待通りの政策が実施されれば、消費拡大や人手の確保にも繋がり、景気回復に明るい兆しがみえると思う」(金融、福井県)、などインバウンドや企業の設備投資が景気を下支えするなかで、減税によって個人消費が回復すれば、と期待している企業もあるようだ。

調査概要 調査名:2025年の景気見通しに対する企業の意識調査 調査主体:株式会社帝国データバンク 調査期間: 2024年11月18日~2024年11月30日 調査対象:全国1万939社