<前編のあらすじ>

美穂さん(仮名、以下同)は61歳の女性です。11年前に25年以上の結婚生活を経て当時の夫であった健一さんと離婚しました。離婚後は年金分割を受け、実家で暮らしながらパート勤務を続けていましたが、数年後に6歳年下の会社員・高志さんと再婚し、彼の扶養に入りつつパートで働いています。

美穂さんは扶養期間が長く、自ら厚生年金に加入した月はわずか10カ月。年金の支給開始を65歳と思っていましたが、友人が「年金は63歳から受けられる」と話していたのを疑問に思って年金事務所に確認します。

そこで職員から、美穂さんは65歳から年金受給が始まると説明を受けた後、「あと2カ月厚生年金に加入するだけで100万円多く受け取れる」との案内されて驚きました。

●前編:【年金が100万円増えるかも⁉ 熟年離婚した60代パート主婦が再婚を機に知った「驚きの事実」】

65歳前に年金が受けられる条件

美穂さんは11年前に、当時の夫・健一さんと離婚して年金分割(合意分割・3号分割)を受けました。美穂さん自身は厚生年金の加入期間が10カ月ですが、25年間の結婚期間中の健一さんから分割を受けた期間で、美穂さんが厚生年金に加入していなかった期間は「離婚時みなし被保険者期間」(合意分割の場合)、「被扶養配偶者みなし被保険者期間」(3号分割の場合)となります。

65歳からの美穂さんの老齢厚生年金は、健一さんから年金分割を受けたみなし被保険者期間分と過去の美穂さん自身の10カ月の厚生年金被保険者期間で計算されます。

一方、美穂さんの世代は厚生年金に1年加入していれば特別支給の老齢厚生年金(特老厚)が63歳から65歳になるまでの2年間受給できることになっています。しかし、この特老厚の受給のために1年以上必要な厚生年金被保険者期間の計算上、みなし被保険者期間は含まれません。

つまり、自分自身の厚生年金被保険者期間だけで1年以上なければ特老厚は受給できないことになります。美穂さん自身の厚生年金被保険者期間は10カ月しかありませんので、1年以上の要件を満たしておらず、このままでは2年間特老厚は受けられません。そのため、今のままだと65歳からの年金の受給開始となります。