これは何のシグナルのなのかを考えてみたいと思います。
さて、2024年4月~12月にかけての米国1年金利と10年金利の推移に注目してグラフ化してみました。青が1年金利、赤が10年金利です。
おわかりのように4月から短期金利が上で長期金利が下の逆転現象が起こっています。9月、11月と利下げが行われ、1年金利はいちど4%を割るところまで下がりました。
しかし、その後1年金利は戻ってしまいます。「利下げは継続しない」という見方が広がったからです。
この1年間、10年金利は1年金利よりもはるかに低いところで推移しており一時期3.6%まで落ち込んでいます。そして、徐々に戻ってきた。
「金融緩和が始まる」「インフレが収まる」そうなるのであれば、本来は1年金利との逆転を解消してからもう少し10年金利は上がるはず。ところが、再逆転してしまったわけです。
次に10年金利から1年金利を引いた長短金利差を1968年のデータからまとめてグラフ化したものをお見せします。ちなみに通常、株式市場関係者は2年金利と10年金利を比較します。しかし、2年債利回りの公式記録は1976年からしかありません。そのため、より古いデータがある1年金利と10年金利の金利差にフォーカスしました。
グラフの中で影がかかっている箇所は、景気後退期です。そして最後までグラフを見てみると、何回か長短金利が逆転している箇所があるのが見えてくると思います。実は長短金利が逆転するのは、今回で8度目です。
ここで2つのポイントに注目していただきたいと思います。1つ目は逆転した際の「谷の深さ」です。今回のボトムでは長短金利差-1.61%を記録しました。このときの谷の深さを他と見比べてみると、いかに深いところまで逆転したかがわかっていただけると思います。
たとえば、90年以降のマーケットを見てみると、コロナ禍の直前に-0.28%を記録しました。2008年のリーマンショックでは-0.48%で、ITバブルも同じく-0.48ですね。湾岸戦争のときはというと-0.36%です。
直近4回の逆転現象では、今回の記録である-1.61%に比べてそれほど長短金利差は深くなかったことがわかります。
次に今回の記録よりも長短金利差が深かった時代を探してみましょう。グラフを見てお分かりの通り、60年代後半から70年代ごろまでさかのぼらねばなりません。
70年あたりのインフレで-1%ほどの逆転現象が起こりました。そしてオイルショックの影響で73年に-1.88%となりました。非常に深く掘られた形です。
80年代にも大きな動きがありました。第12代FRB議長であるポール・ボルカーがインフレ抑制のため、急激な利上げを行ったことが要因です。その結果-3.44%まで掘られました。