Finasee読者から寄せられたさまざまな体験談を紹介する本連載。今回は「ヤングケアラー」がテーマです。

ヤングケアラーとは、本来大人が担うような家事や家族の世話などを日常的に行う子どものこと。令和3年の調査(※)では、公立中学に通う中学2年生の約17人に1人がヤングケアラーに該当することが判明しています。一方、自分をヤングケアラーだと自覚する子どもはわずか2%にとどまっています。
※文部科学省、厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査結果」

このような環境にある子どもたちは、学業への支障、睡眠不足などによる健康面への影響、友人との交流の減少などさまざまな課題を抱えています。

今回はヤングケアラーの現状を知るきっかけとなる読者のエピソードをお届けします。

ヤングケアラーのためにできることはないのだろうか

<進さんプロフィール>

男性、50代、関東地方在住

<投稿エピソード>

ヤングケアラーについて、どれぐらいの人が知っているのだろうか。この言葉自体、まだまだメジャーになっていない気もする。そのため、当人でさえ、自分がヤングケアラーであることを認識していないこともある。

ヤングケアラーというのは、子どもが自分の時間を割いて家族の面倒を見ることを言う。自分の時間というのは、学校に行く時間、友だちと遊びに行く時間、塾や習い事に行く時間のことだ。子どもとして過ごすべき時間を、家族の面倒を見る時間に充てなければならない子どもは多い。

しかし子ども自身やその家族は、その子がヤングケアラーだとは思っていない。「家族が家族の面倒を見るのは当たり前だ」という考え方があるからだ。

確かに、家族が家族の面倒を見るのは当然かもしれない。だが、面倒を見るために自分の時間が犠牲になっていることを無視していいとは言えない。

私がまだ子どもの頃、友人にヤングケアラーがいた。当時の私はヤングケアラーという言葉を知らなかったが、その子の家に遊びに行くと、その子は介護をしながら、その合間に私たちと遊ぶというようなことをしていた。子ども心に何か変だなと思っていたが、それ以上は何もできなかった。

そしてその子は大人になる前に、自ら命を絶った。それほどつらかったということだ。誰も彼と真剣に向き合わなかったから、そんなことになってしまった。そして、私自身も、彼がそんなにつらかったことに気付けなかったことを後悔した。

それから大人になり、私は児童精神科医になった。児童精神科医になっても、やはりヤングケアラーの子どもをよく見る。家族の受診のために、通訳として子どもが付き添っていることがあるからだ。

そんなヤングケアラーのためにできることはないのだろうか。「支援を受ける権利」。これが必要だと認識すること、社会全体としてヤングケアラーがいるという事実を理解すること、家族のための犠牲が当たり前ではないこと、そういったことを全ての人に知ってもらいたい。そして、国としてもヤングケアラーに対する配慮ある方針を打ち出してほしい。私はそう願ってやまない。

●ヤングケアラーに多く存在する「きょうだい児」。特有の課題は子どもの時だけでなく、大人になってから初めて直面するものもあります。後編【もう「きょうだい“児”」ではないけれど…障害のある兄を持つ女性が大人になって直面した課題とは】で詳説します。

参考:関連サービスの相談窓口(こども家庭庁)
※ご紹介している投稿エピソードは原文に準拠しています