近年、「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、多くの個人投資家が資産運用の世界に足を踏み入れています。新NISAの導入により、投資は以前にも増して身近なものとなりました。しかし、2024年8月初旬に発生した日米同時株安は、特に新NISAを通じて初めて投資を始めた人々にとって、大きな衝撃となりました。このような市場の急変動は、短期的なリスクの現実を投資家に突きつけると同時に、資産運用を考える上で重要な教訓として受け止めるべきでしょう。
クオリティ・オブ・ライフを守るための資産運用
今、投資は自己責任と言われています。当たり前のように聞こえますが、かつては企業年金の多くが確定給付型(DB)で、資産運用のリスクは企業が負っていました。現在では、個人が運用先を選択してリスクを取る確定拠出型(DC)への移行が進んでいます。また、銀行預金もかつては高金利の時代がありましたが、今では預金だけで資産形成をすることは難しくなっています。
このような時代だからこそ、自分で考え、納得したものに投資する姿勢が求められます。「みんながやっているから」「人気だから」という理由で選んだ投資商品では、リスクが顕在化した際に精神的なショックも大きくなりかねません。逆に、自分自身が投資の仕組みやリスクを理解し、納得した選択を行うことで、初めて自己責任で投資を行うメリットが生まれるのではないでしょうか。
資産運用の最終的な目的は、「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」を守り、高めることにあります。これは、単なる金銭的な豊かさだけでなく、精神的な安定や充足感を含むものです。
たとえ長期的には投資で利益を得られる見込みがあったとしても、リスクを過小評価した結果、短期的であれ大きな損失を被れば、「最後は儲かるはずだ」と自分に言い聞かせても、その過程で生じる精神的な負担は無視できません。その結果、クオリティ・オブ・ライフは大きく損なわれる可能性があります。