無関心層と二極化の発生

一方で、DC投資教育を提供する側として感じる課題は、常に存在します。一つは無関心層の存在と二極化の発生で、もう一つが「(内容は)わかった」けれど、「行動に結びつきにくい」ということです。

「制度に対する加入者の無関心」を一番の悩みに挙げる企業型DC担当者は26.9%を占めています(※2)。無関心層への対応は、多くの事業主の悩みの種といえるでしょう。

元本確保型への配分割合別に加入者を棒グラフにすると、100%と0%の両極端に高い棒がみられます(野村證券受託の加入者。毎月の掛金配分ではこの傾向がより顕著になる)。ここ数年の株式市場の好調さから、元本確保型のみにしている人と、投資信託のみにしている人では、資産残高に相当の開きが発生しています。

元本確保型のみにしている人が、強い意思で選択しているのであれば、まさに自己責任ですが、「わからないから」「教えてもらってないから」というケースも想定されます。

継続教育を実施するなかで印象に残ったエピソードが二つあります。

A社は、リーマンショック後からアベノミクスに向かう間、毎年、定期的に継続教育を実施していました。就業時間内に数回に分けて、受講必須での展開です。

30代の女性から「毎年、受講してきたけれど、3回目にしてやっとわかった」と言われました。3回目ともなると受講者の知識レベルに幅が出てきて、アンケートでは「似たような内容を繰り返しても意味がない」という反応もありました。しかし、興味がない人・関心が薄い人には繰り返し開催し、参加する機会を作り続けることが重要だと感じました。

B社の場合は、就業時間外で対面セミナーを実施してきました。仕事の終わった後の時間なので、どうしても「興味がある人」が参加することになります。その日は、帰ろうとしていたところに、たまたま帰宅時間が一緒になった同僚に誘われて参加した人がいました。

一とおりの説明が終わって、雑談ベースの質疑応答の時間に「なんで今まで教えてくれなかったんだ!」という声がしました。ご自身と同僚の資産残高の差を確認し、愕然としたのです。

どちらのケースも、定期的な開催が「わかった」につながったと考えられます。DC継続教育は定期的に発生するイベントとして、社員に浸透させることが重要といえそうです。

たとえば、4月の新入社員の時期には必ずDC説明会を実施し、既存の加入者も参加できるような設定にするという方法などです。

※2 特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会(NPO法人DC iDeCo協会)「2023企業型確定拠出年金(DC)担当者の意識調査に関する調査結果」