◆トップ10圏外に落ちた「世界半導体株投資」の行方

「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、半導体株の象徴的な存在であるエヌビディアの株価に大きな影響を受ける。エヌビディアの株価は、8月28日に発表した第2四半期決算(5-7月期)の内容が好調だったにも関わらず、その決算を受けて前日比6%強も下落した。決算内容は、売上高が前年同期比2.2倍、純利益が同2.7倍という好調な内容で、次期の第3四半期(8-10月)の売上高予想も約325億ドルと、市場予想の平均317.7億ドルを超える強気の見通しだった。好決算に加えて500億ドルの自社株買いをも発表しても株価が下落するというのは、これまでに同社株価がいかに割高な水準にあったかということを示しているようにみえる。

エヌビディアの株価は、2022年12月末の14.61ドルが、2023年12月末には49.52ドルに1年間で3.4倍に上昇した。そして、2024年6月の高値は140ドルを超えた。2023年6月の株価は約39ドルであったので、1年間で株価が3.6倍になっている。しかし、2024年第2四半期決算の純利益の成長は2.7倍だ。企業の実態よりも株価は先を急いで上昇している。今後も市場の予想を上回る決算を維持できれば、今の株価は妥当だといえるのだろうが、果たして、それは実現可能なのだろうか? そのような逡巡が決算発表後の株価下落には表れているようにみえる。

「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の基準価額(分配金込み)は7月11日の最高値19万9424円から、8月6日に13万5732円に下落して、8月末は15万4127円だ。「S&P500」が7月の史上最高値にほとんど届くほどに回復していることと比べると、同ファンドの基準価額の戻りは鈍い。今回の株価上昇の背景になった「AI(人工知能)の実用化」という将来は半導体産業の明るい未来を約束しているといえるだろう。それがすべてエヌビディアにかかっているわけではないし、ファンドは24銘柄に分散投資もしている。半導体産業の長期的な成長に投資するという観点に立てば、このまま消えてしまうファンドではないと考えられる。

執筆/ライター・記者 徳永 浩