◆国内株下落は海外ファンドにどれだけ影響する?
7月の資金流入額ランキングでは、米S&P500インデックスや「FANG+インデックス」など、米国株インデックスファンドの流入額ランキングが上昇した。米国株は7月10日まではS&P500とNASDAQ総合が連日の史上最高値更新となり、7月15日から17日まではNYダウが史上最高値を更新するなど、7月中旬までは順調に株価が上値老いを続けていた。この当時の株価の勢いは、米国の株価上昇に期待した投資を促す要因だったと考えられる。ただ、7月後半には米国株価に調整機運が高まり、8月になると、日本の利上げをきっかけにした日本株安が波及する形で、米国株も大きな下落局面に入った。
そして、今回の株安は、7月末に1ドル=152円台だったドル円が8月5日には142円台という急激な円高にもなった急速な円高を伴っているだけに、米国株ファンドには株安に加えて円高に伴う為替評価安というダブルダメージとなり、基準価額の大きな下落につながっている。たとえば、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価額は7月末2万9851円が、8月6日には2万7091円と、わずか4営業日で9.25%下落した。同じ期間に「iFreeNEXT FANG+インデックス」は5万5710円が4万9755円に10.69%下落し、米国株の組み入れ比率が60%を超え、日本株を5%程度組み入れる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」も2万5027円から2万2688円へと9.35%下落した。
急落の震源地となった国内株では「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均株価)」は、7月末から8月5日まで3営業日で19.58%安という急落になったことを考えると、まだ、海外株ファンドの下落率は抑えられてはいるが、今後の展開いかんでは、一段安ということもあり得る。なにより、1週間足らずで10%程度も資産価値が目減りしたという体験は、投資経験の浅い投資家にとっては大きな痛手と感じられたのではないだろうか? この急落が、株式ファンドの資金流出入にどのような影響を与えることになるのか、8月の結果を待ちたい。
◆7月新設ファンド「あおぞら・新グローバル分散」の危機回避機能
なお、7月に新規設定されたファンドは16本で、設定額は合計約570億円だった。前月と比較して設定本数(前月は13本)、設定額(同約270億円)ともに増額し、5月の実績と並んだ。
新規設定額で最も大きかったのは、「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2024-07」だった。同ファンドは世界の株式と債券に分散投資し、1年かけて株式の組入比率を6割まで段階的に引き上げるファンドである。一般の公募投信ながら、積立投資の機能を備えているユニークなファンドだ。2014年から定期的に設定されているシリーズファンドだが、今回の設定分が最も多くの資金を集めた。
7月は前半に世界の株価が大幅に上昇し、日米ともに主要株価指数が史上最高値を更新している。当ファンドの人気は、この上昇した株価の反落を警戒して時間分散や資産分散を望む投資家が増えていることの兆候といえるのかもしれない。8月に入って世界の株価が急落したことを考えれば、この投資家の危機回避行動は的確であったといえる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩