この急落は積立投資に影響を及ぼすものなのか
では、今回の暴落を挟んで、新NISAで運用していた投資家は、どう動いたのでしょうか。実は案外、冷静だったのではないかというのが、いくつかのデータを見ての、私の感想です。
新NISAがスタートした年初から、話題は三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用している「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」と、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」でした。年明けから多額の資金を集め、新NISAといえばこの両ファンドで運用するというイメージが定着していました。
この時点で「ん?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。「オルカンは損切りだ!」といった冷静さを失った声もSNSなどで流れていたようですが、よく考えてみてください。
まずS&P500は米国の株価指数なので、日本株の暴落とは関係ありませんし、オール・カントリーには確かに日本株も含まれてはいますが、国別の投資比率で言うと、5%ほどに過ぎません。新NISAを、オール・カントリーやS&P500のインデックスファンドで積立投資しているような人にとって、今回の日本株暴落は、あまり関係のない話ではないかと思うのです。
投資信託協会が発表しているデータのうち、投資信託のタイプ別の資金流出入を計算してみました。これは「国内株式」、「国内債券」、「国内REIT」、「海外株式」といったように、投資信託のタイプ別に設定額から、解約額と償還額の合計額を差し引いて求めています。
それによると、新NISAがスタートした1月から6月までの資金流出入額(合計額)は、以下のようになりました。
国内株式・・・・・・1兆594億3000万円
国内債券・・・・・・1314億9800万円
国内REIT・・・・・・1296億2800万円
海外株式・・・・・・5兆45億3200万円
海外債券・・・・・・4404億4700万円
海外REIT・・・・・・▲336億2100万円
インデックスその他・・・・・・5兆8908億5000万円
▲印は資金が純流出だったことを意味します。オール・カントリーやS&P500などのインデックスファンドは、「海外株式」「インデックスその他」にカウントされています。こうして見たところ、新NISAがスタートした1月から6月に至るまで、資金が流入しているのは「海外株式」と「インデックスその他」であり、「国内株式」はそれほどでもないことがお分かりいただけるでしょう。
しかも「国内株式」の場合、5月は1兆1730億4600万円、6月は801億700万円の資金純流出でした。あくまでも推測に過ぎませんが、おそらく株価が最高値に向けて上昇するなか、利益を確定させるための解約が、5、6月にかけて大量に生じたと思われます。
この数字から察するに、新NISAで投資を始めた人で、今回の日本株の暴落による影響を受けた人は案外少ないのではないか、と思うのです。なぜなら「国内株式」は利食いで解約されて資金流入額が少なく抑えられる反面、「海外株式」と「インデックスその他」に多額の資金が流れ込んでいるからです。
もちろん、「インデックスその他」には国内株インデックスも含まれますが、これまでの流れからすると、資金流入は国内株インデックスよりも海外株インデックスが優勢であると思われます。